第4章 手にしたい力 と 手にした力
結莉乃
(全部が硬いなんて有り得る?…そんな事ない筈…!それならっ)
ばっと異形を見据えると結莉乃は再び踏み込み、脚を切り付ける。
異形
「ギャアア!」
すると、笑っていた異形から初めて悲鳴と紫の血液が溢れた
結莉乃
「やっぱり…!」
手脚は硬くないんじゃないかと予想した通り異形に傷を負わせる事が出来た。そして、そのまま突っ込むと…
結莉乃
「うっ…!」
異形の手が腹部にめり込み背後にあった木に思い切り背中を強打した。苦しさに表情を歪ませながら、ずるりと地面に座り込む
慎太
「結莉乃…!」
刀で異形の攻撃を受けながら結莉乃を振り向いた慎太に、顔を上げ痛みに耐えながら大丈夫だと笑って見せた
結莉乃
(息が苦しい…口の中、血の味がする…。殴られるってこんな感じなんだ、苦しい…苦しい、痛い!けど…っ)
初めて受ける痛みに知らない間に流れてきた涙は雨と共に流れ落ちていく。拳を強く握り痛みに意識を持っていかれそうになりつつも何とか立ち上がり、咥内へ溜まった血を吐き出す
結莉乃
「ぜっっったい!負けない!!」
自分に言い聞かせる様に雨にも負けない程の大声は異形を切り付けた慎太にも聞こえており、彼の口角は僅かに上がっていた。
痛みを味わって初めてちゃんとした覚悟を出来た気がした結莉乃は、ぐっと柄を握り直すと先程よりも強く踏み込む。
間合いを詰めた結莉乃に向かって下ろされた手を何とか、かわして思い切り腕を切り落とし…最後はどうすれば、と一瞬悩んだ隙に慎太が異形の額を貫き事切れた
結莉乃
「はぁ、っ…はぁ…っ…あり、がとう…慎太、くん…」
慎太
「大丈夫か?…頑張ったな」
結莉乃
「でも、私…っ…二体しか…」
慎太
「二体も、だろ。この天候で初陣なら上出来だ」
殆ど倒してくれた慎太の言葉に結莉乃は救われた気がした。六体も相手にしたのに慎太の息は一切、乱れていなくて流石だなと結莉乃は思った