第4章 手にしたい力 と 手にした力
結莉乃
「着物…破っちゃった…」
慎太
「…戦いやすくした、それだけだ。怒られる理由が─…結莉乃!」
結莉乃
「え…?」
慎太が話している途中で結莉乃の名前を呼びながら突き飛ばす。それが分からなくて結莉乃が振り向くと、そこには…異形の腕が慎太の身体を貫いていた
結莉乃
「慎太くん!!」
結莉乃の悲鳴の様な叫びが響く。
どうやら異形が一体、隠れていたらしく結莉乃は柄を握り直すがそれよりも先に慎太が顔を歪ませながら異形の首を切り落とした。ずるりと慎太の身体から腕が抜け落ちると、口から血を吐き出して慎太は倒れてしまった
結莉乃
「慎太くん…っ!」
鬼の治癒力が高いとはいえ穴の空いた身体からはとめどなく血が流れ、おまけに雨が降っている。
結莉乃は駆け寄ると眞秀に何気なくやった様に傷へ両手を重ねる。だが、あの光は現れない
結莉乃
「嘘、何で!?…同じ様にしてるのに…何が違うの!?」
出来るかもしれないと思っていたそれが出来ず、その間にも慎太から流れる赤は止まらない。
慎太
「大丈夫、だ…鬼の…治癒力、は…高い…からな」
結莉乃
「そんなっ…そんな事言っても…全然っ」
降り続く強い雨が彼の傷の治りを遅くさせる。結莉乃は少しでも血の流れを止めようと両手を乗せる
結莉乃
「お願い…お願いだから!彼の傷を治したいの…!!」
悲痛の叫びが雨に溶けて結莉乃に絶望が襲いかかろうとした瞬間…彼女の両手から淡い光が溢れ出し慎太の傷へと浸透していく。すると、穴はゆっくりと塞がっていき…破れているのは着物だけだった
結莉乃
「良かっ…た…」
慎太
「結莉乃っ」
慎太の傷が治ったのを見届けると結莉乃は、ばたりと倒れてしまった。
「…………」
綺麗な傘の下で誰かがその様子を眺めていた─…