第4章 手にしたい力 と 手にした力
慎太は傘を閉じるとそのまま歩いてくる異形と距離を詰め、傘の先端で攻撃を繰り出していく。結莉乃は、ゆっくりと息を吐き出すと羽織を脱ぎ捨て素早く抜刀し構えるが…いざ、異形を目の前にすると身体が震えそうになる
結莉乃
(教えてもらったとはいえ、今まで普通に生きてきた私が急に刀なんか振り下ろす事が出来るわけ!異形だって分かってるのに…でも、やらなきゃ私が死ぬ…)
奮い立たせ、気を引き締めたはずがまた弱い心が戻ってくる
慎太
「結莉乃!」
結莉乃
「……っ…!」
慎太の声に、はっとすると結莉乃の前で岩のような異形が腕を振り上げていた。その瞬間、金縛りにあった様に動かなかった身体が軽くなり…気が付けば異形が振り上げた腕を切り落としていた
異形
「グギャア…!」
咄嗟に動けたのは、恐らく日々の鍛錬のおかげだろう。
悲鳴に顔を歪めつつも弱い心が吹っ切れたのか、腕を切り落とされて怒った異形へ追撃をかけ斜めに刀を振ってから…胴を貫く
異形
「ヒギャアァ…!」
結莉乃
「…っは…やった…!」
慎太
「結莉乃、まだいる…!」
結莉乃
「うん!」
結莉乃が一体、倒すまでの間に慎太は既に四体も倒していた。
結莉乃
「硬…っ!」
身体が大きく動きは他の異形よりも鈍いが…その分、身体が硬く結莉乃は驚いて一瞬後退する。
結莉乃
「…ごめんなさい!」
大きく謝罪をすると結莉乃は袖に思い切り打刀をめり込ませ、そのまま勢い良く引き下ろして上質な布を切り落とす。そして、もう片方も同じ様にしてから裾を広げ…草履も脱いで動きやすくなると思い切り踏み込む
結莉乃
「くっ…やっぱり硬い…!」
異形
「ヒヒャヒャヒャ!」
馬鹿にするように笑う異形を前に結莉乃は柄を握ったまま考える