第4章 手にしたい力 と 手にした力
結莉乃
「も、もう一回…!」
眞秀
「嗚呼…!」
女性の領、杠であれば女性が刀を持つ事は不思議ではないが、他の領で女性が刀を持つのは珍しい事で…眞秀は結莉乃の根性強さに少し驚かされていた。
華奢な腕や身体で眞秀の強い一撃を受け、その度に痺れている筈なのに怯む事無く突っ込む結莉乃を見て眞秀は、彼女の気持ちが生半可なものでは無いと理解した。
ちゃんと彼女が刀を振れるようになるまで力になろうと、改めて決意をする。
更に三十分後─…
眞秀
「一旦休憩しよう」
結莉乃
「はぁ、っ…は……え?でも、まだ…」
眞秀
「焦っても力にならないぞ。それに、いきなり飛ばし過ぎると身体が壊れちまう」
結莉乃
「分かった」
肩で息をしながら結莉乃は頷いて、その場に崩れる様にして座り込む。その隣に眞秀くんが腰を下ろし手拭いを結莉乃に渡す
結莉乃
「ありがとう」
手拭いを受け取り額に張り付いた前髪を軽く払ってから汗を拭う。まだまだ始めたばかりで成果は感じられないものの、結莉乃は充実感の様なものを味わっていた。
眞秀
「結莉乃は筋が良い」
外から入ってきた風の涼しさに目を瞑っている結莉乃へ、不意に眞秀が声を掛け閉じていた瞼を持ち上げ瞳を彼へ向ける
眞秀
「飲み込みが早いし、これから鍛錬していけばある程度は使い物になるの思うぞ」
結莉乃
「本当!?」
眞秀
「嗚呼」
そして、二人の鍛錬が数日続いたある日…結莉乃が今日も学ぶ為に道場へやってくると、そこには眞秀だけでなく凪も居た
結莉乃
「え、凪さん…?」
眞秀
「これ」
結莉乃
「……?」
何故、凪が居るのか…その疑問に答えてもらうよりも先に眞秀から木箱を渡され結莉乃反射的に受け取ってしまう