第4章 手にしたい力 と 手にした力
翌日─…
眞秀
「本当にやるのか?」
結莉乃
「やる!」
昼の時刻、二人は道場で向かい合って立っていた。
結莉乃は腰までの黒髪をポニーテールで結び、やる気満々の様だが眞秀はあまり気が乗らないらしい。
眞秀は前へ垂れてきた、元結で纏められた鎖骨までの赤錆色の髪を後ろへと戻して結莉乃を見詰める
眞秀
「何も刀を握らなくても良いんじゃねぇか?」
結莉乃
「昨日は稽古つけてくれるの許可してくれたのに…」
眞秀
「したが…やっぱり、もう少し考えた方が良いんじゃないか?俺が守ってやるし」
結莉乃
「全く守ってもらわなくなるのは無理だって、自分でも分かってる。でも、全く足掻きもしないで守ってもらってるだけ何て嫌なの。…もしもなんて無いと思うけど…もしも眞秀くんがボロボロになったら、私を守りながら戦ってたからそうなったんだって…思っちゃう、自分勝手な理由なのは分かってる」
眞秀
「………」
結莉乃
「だけど、自分の身は自分で少しは守れる様になりたい…!」
何とも我儘な理由だと、結莉乃は話していて思った。それと同時に自分はこんな事を思う気持ちを持っていたんだと、少し引いた。非力だし、刀なんか持った事も無いくせにと心中で自身に悪態を吐いた。
眞秀
「……分かった。俺も一度は受けたんだ、腹括るよ」
結莉乃
「……っ!ありがとう、眞秀くん!」
眞秀
「ただ、やるからには手を抜かない。良いな?」
結莉乃
「はい!」
稽古をつけてもらえる、それに対して眩しい笑顔を浮かべる結莉乃は、眞秀からしたら初めてのタイプで何だか不思議になったが…心が暖かくなったのを感じた。
そして、稽古は始まった─。
結莉乃
「こう?」
眞秀
「嗚呼。慣れたらきっと自分の持ちやすい持ち方になると思うが、それは基礎がちゃんと出来てるからの話だ。だから、結莉乃は─」
結莉乃
「基礎を忠実に、だね」
眞秀
「そうだ」
掬いとる様にして引き継がれた言葉に眞秀は満足そうに頷く