第4章 手にしたい力 と 手にした力
慎太
「その印象は間違っていない、と思う。……その、何と言うか…」
結莉乃
「……?」
眞秀ルートで出てきた慎太の言葉は歯切れが良かった為、結莉乃は首を傾げて彼を見上げる。慎太はその視線から逃れる様に顔を背けたが、すぐに結莉乃へと紺碧色の瞳を戻した
慎太
「一目見て惚れたんだ、あんたに」
結莉乃
「え…」
予想もしていなかった言葉に結莉乃は固まってしまう。理解が追いつかず頭でぐるぐると考えている結莉乃を無視して、慎太は言葉を続ける
慎太
「だから、あんたを追い出そうとか…排除しようという考えは浮かばなかった。俺は話すのが上手く無いし…伝え方が下手で相手を怒らせる事もあるから話さない。でも、あんたとは話したいと…そう思うんだ。一目見ただけで惚れてしまうなんて初めてで…あんたを困らせているのは分かっているんだが、言葉を止められなくて…」
結莉乃から視線を外した慎太が僅かに俯くと目に軽くかかる程度の前髪が彼の横顔に影を落とした。髪の長い胤晴と凪、眞秀と比べて短く結莉乃が見慣れたショートの紺色の髪が風に揺れた。
彼がこんなに饒舌になる所を初めて見た結莉乃は、それにも言葉にも驚いていた。だが、饒舌ながらも不器用に並べられた言葉に胸がいっぱいになるのと同時に何て返せば良いのか分からずぎこちなくなってしまう
結莉乃
「あ、えと……そんな事言われたの初めてで…何て返せば良いのか…。でも…凄く嬉しいです。ありがとうございます」
慎太
「そうか…それなら、良かった。……ただ、何か答えが欲しいわけじゃない。伝えたかっただけで…こんな事を言われて困っただろう」
結莉乃
「い、いえ!驚いただけで困っては無いです、本当に!」
彼女の言葉に俯いていた慎太の顔は上がり、安堵した表情を覗かせており…結莉乃は小さく息を吐き出した。