第3章 始まった非日常
結莉乃
(どうしよう…っ…)
遂に目の前までやってきた異形は二人を殺めようと腕を振り上げる。結莉乃は少女だけでも、としっかりと庇う様に抱き締める
だが─…
眞秀
「ったく、俺から離れるなって言っただろ」
異形
「ギャアア…!」
ぎゅうっと目を瞑っている向こうで聞こえた頼もしい声と不気味な悲鳴に、結莉乃はゆっくりと少女を抱き締めていた腕を緩め瞼を持ち上げ視線を向ける。
するとそこには眞秀の…出会った日にも見た、頼もしい背中が
結莉乃
「眞秀…くん…」
眞秀
「大丈夫か?」
結莉乃
「うん…私は平気。貴女は?大丈夫?」
少女
「うん!お姉ちゃんとお兄ちゃんのおかげで大丈夫、ありがとう」
私は何も…その言葉を結莉乃が紡ぐよりも先に少女の母親が迎えに来て、それを彼女へ告げる事は無かった。
眞秀は刃についた異形の血液を振り払うと鞘に刀を戻した。
眞秀
「結莉乃」
座り込んだまま少女を見送る結莉乃の隣に眞秀がしゃがむ
結莉乃
「あ…えっと、ごめんなさい…私が行っても何も出来ないのは分かってたんだけど、身体が勝手に…」
時々ゲームである、ヒロインが考えも無しに突っ込んでいき迷惑をかけるシーン。それに良くツッコミを入れていたものに自分がなっていた。でも実際、目の前にしてみると身体が勝手に動いてしまうものなんだと…結莉乃は思った。
眞秀
「結莉乃が気付いてなきゃ、あの子は助かってなかったかもしれない。だから、ありがとな」
結莉乃
「そんな…」
優しい言葉を掛けてくれる眞秀に視界が滲みそうになったが、結莉乃はある異変に気が付いた。
結莉乃
「眞秀くん怪我してる…っ」
眞秀
「ん?…あぁ、大丈夫だ。鬼の治癒力は高いからな、こんなのすぐ治る」
右の頬に斜めに出来た赤い線…それに触れ、手についた血を確認してから眞秀は心配そうに見詰める結莉乃に笑ってみせた