第3章 始まった非日常
結莉乃
「私の事、守ってくれた時に出来たんだよね…」
申し訳なくて結莉乃は見詰めていたが、気が付けば眞秀の怪我をした頬へと手を伸ばしていた。
すると─…
ふわりと光が彼女の手から溢れ、その光は眞秀の傷へと伸び…浸透していくように広がる。
その光景に二人は驚いて顔を見合わせてから、結莉乃は自身の掌を見下ろす
結莉乃
「何…?…何が起こったの……あ、眞秀くんの傷」
眞秀
「え?……あ、治ってる」
再び眞秀が頬に触れると、そこには最初から怪我などしていなかったかのように治っていた。二人は結局、理解できず帰って胤晴に報告をする事にし甘味処へは後日向かう事にした。
眞秀
「ちょいと失礼」
結莉乃
「え……わっ…!」
眞秀は一つ断りを入れると結莉乃の身体を軽々と抱き上げてしまった。結莉乃は突然の事に驚き、咄嗟に眞秀の首に腕を回した
結莉乃
「な、何で抱き上げるの!?」
眞秀
「草履」
結莉乃
「あ…」
眞秀
「大方、二足とも異形に投げちまったんだろ?」
結莉乃
「仰る通りです…」
眞秀
「草履もないのに歩かせらんねぇよ。…それに、傷治してくれてありがとな」
結莉乃
「ありがとう。…と、どういたしまして…?」
傷を治した事については、どうやってやったかも…何故できたのかも分からずお礼を述べられても何となくでしか返せなかった。
抱かれたままで周りからの視線は痛かったが間近で見る推しの綺麗で頼もしい姿と表情に見惚れていた。
そして、その道中で結莉乃は思うのだった
結莉乃
(守りながら戦うのって意識をいっぱい向けなきゃいけないから、凄く大変だよね。昨夜も守ってもらって、今も守ってもらった…いつ帰れるか分からないし、此処に居る限りこのままじゃ駄目だ…自分でも退けれるくらいにならないと)
やらなきゃいけない事は沢山ある、まずその第一歩は守られ過ぎない事。剣を握った事もない自分が、全く守られ無い腕を身に付けるのは無理だと…それは理解している。だから、せめて少しでも自分の身を守って重荷を減らしたいと結莉乃は心に決めたのだった