第3章 始まった非日常
結莉乃
「思いが伝わらなくて拗れてって…どこの世界にもあるんだね。沢山の人が居るから、沢山の考えがある。分かってるけど、何だか寂しいなって思う。……いつかその人達を辛い所から助け出せるって、私は思うよ。…って何も知らないのにこんな事言われても気分悪いよね」
眞秀
「いや、嬉しいよ。ありがとう。…結莉乃の言う通りだ…時間はかかっちまうかもしれねぇけど、絶対に助け出す」
眞秀の強い瞳を見て結莉乃は少し安堵した。
ゲーム内で見たから知っているが、反発しているのは殆どが人間で…他種族はそこまで反発していない。同じ人間だからこそ、その事実が辛くて…自分が彼等と居ても良いのか疑問に思う。
結莉乃
「あの…」
眞秀
「ん?」
結莉乃
「私は本当にあそこに居ても良いのかな…。人間、だよね…反発が多いのって。それなのに私が居たら…」
眞秀
「ん、まぁそうだが…人間皆が反発したり、悪い奴ってわけじゃねぇよ。結莉乃は悪い奴には見えねぇし」
結莉乃
「そっ、か…ありがとう」
その言葉に嬉しく思いながらも、聞いても良いのか悩む。でも、聞くならこのタイミングの様に結莉乃は感じ…思い切って問い掛ける事にした。
結莉乃
「あの…たまたま耳にした事があるんだけど」
眞秀
「何だ?」
結莉乃
「胤晴さんが女の人を招くのは珍しいって…」
眞秀
「あー…」
その事か、というような空気を出しながら眞秀は何かを考え込んでしまう。自身の長の事だ、言っても良いのか悩む前に言わない判断をしなきゃいけなかったのだが…何故か彼女には話しても良いような気が眞秀はしていた
眞秀
「大将には夫婦になる予定だった人がいるんだが、その人の命が人間の手によって奪われたんだ。…それから、笑顔も口数も減って冷たくなった」
結莉乃
「………」
眞秀
「…そっから、住んでる俺等と女中以外はあの屋敷で見なくなった。前までは俺等と食事を摂っていたんだが、今では極力自室から出て来なくなっちまった」
寂しげに揺れる瞳を結莉乃は眉を下げて見詰める