第20章 目覚めた先で見た世界·弍
結莉乃
「嘘……此処、私が借りてた…部屋…、…夢?」
遂に戻りたいという強い気持ちが夢を見させているのかと思った。典型的でそんな確認の仕方ある?と思った事があったが…これが一番、手っ取り早いと感じ結莉乃は頬を摘む
結莉乃
「痛っ……て事はこれ…夢じゃ、無い?」
結莉乃はいつの間にか手に持っていたスマホを確認して安堵する。現実世界に戻ってからフォルダを見た時、結莉乃は絶望した。ゲーム世界で撮った写真が全て無くなっていたからだ
だが、今確認したら全て元通りになっていた
結莉乃
「あんなに寒かったのに…」
現実世界に戻った時よりも結莉乃の表情は明るく自然と口角が上がっていた。結莉乃が自身の身体を見下ろすと、あの日とは違い現実世界の服ではなく着物をちゃんと纏っていた
結莉乃
「帰ってきたんだ…!」
─そして今に戻る…
漸く状況を受け入れられた全員が立ち上がり表情を明るくし
全員
「お帰り」
結莉乃
「……っ…ただいま!」
その言葉が嬉しくて結莉乃は涙を溢れさせながら笑顔で返した。皆がいる…その事実が堪らなく嬉しかった。
結莉乃
「桜…一緒に見られたね」
眞秀
「嗚呼。良かったよ、本当」
八一
「原理は良く分かんないけど戻ってこられて良かったね」
結莉乃
「うん。…あんなに寒かったのにもう春になってて驚いた」
天音
「何言ってンだ、アンタが帰ってから五ヶ月も経ってンだぞ」
結莉乃
「え、そんなに!?向こうだと数日しか進んで無いのに…」
やはり時の刻みが異なっているのだと結莉乃は納得する
凪
「どうしようもありませんが…良かったのですか?もう向こうには戻れないと思いますが…」
結莉乃
「良いんです。私、此処の方が好きなんです。景色も空気も人も……それに皆が居るから、私は此処が好きなんです」
結莉乃の嘘偽り無い笑顔と言葉に安堵と喜びを感じる