• テキストサイズ

「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第20章 目覚めた先で見た世界·弍




結莉乃
「向こうに戻ってから私の毎日は色褪せていて苦しくて悲しかったです。変ですよね…前はそこで過ごしていたのに」

慎太
「変じゃ無いと思うぞ。此処が合っていた、それだけだ」


慎太の言葉に結莉乃は、そうだね…と嬉しそうに頷いた。胤晴は会話には入らず結莉乃の声が聞こえる、それだけで幸せなのか彼等の会話を聞きながら酒を一口喉へ通す

そんな胤晴に気が付き結莉乃は彼の隣に腰掛けた


結莉乃
「胤晴さん」

胤晴
「ん?」

結莉乃
「会いたかったです、胤晴さんに」

胤晴
「…俺もだ」


結莉乃は目を細め胤晴の肩に頭を預ける。彼等は二人に気遣うように視線をやらず会話を楽しんだ


結莉乃
「やっと…息が出来た気がします」

胤晴
「息?」

結莉乃
「はい。私が住んでいた世界は何だか息苦しかったんです。…ずっと此処の事を考えていました」

胤晴
「だから、戻ってこられたのかもしれないな」

結莉乃
「ふふ…そうかもしれません。これからは向こうに戻ってしまうかもなんて思わずに胤晴さんの隣にいられます」

胤晴
「そうだな。…生涯、君だけを愛すると誓うよ」

結莉乃
「何かそれって…」

胤晴
「勿論そのつもりで言っている」


見上げた結莉乃を柔らかな紅い瞳が見詰め、愛しげに細められる。結莉乃は早くなる鼓動に、まるで返事を急かされているような気分になる

嬉しさから詰まりそうになる喉を何とか開く


結莉乃
「私もっ…生涯、胤晴さんだけを愛します」


必死に告げる結莉乃を胤晴は優しく抱き締める。結莉乃は幸せを噛み締めながら胤晴の背中に腕を回す


便利よりも不便な生活でも彼女にとっては、掛け替えない大切な日常になっていた。楽な事ばかりではないが、周りに信頼出来る仲間が居て…愛する人が居る。

それだけでどんな困難も今までのように乗り越えていけると結莉乃は思うのだった



自分が居た世界では無く、彼等の世界で結莉乃はこれから生を刻んでいく─…



結莉乃
「皆、大好き…!」




/ 268ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp