第19章 それは前兆として増え迫るもの
慎太
「俺…あんたに助けてもらった雨の日の事ずっと忘れない」
結莉乃
「私もだよ。…変な言い方だけど慎太くんのお陰で力の使い方、分かったというか…」
慎太
「そうか…あんたの力になれていたなら良かった。俺はあんたを…結莉乃を好きになれて良かった」
結莉乃
「慎太くん…。私こそ好きになってくれてありがとう」
ぎこちなく広げられた慎太の腕の中に結莉乃は迷わず飛び込みしっかりと抱き締める。そして次に天音がやってくる
天音
「あー…その、何だ…」
結莉乃
「…ありがとう、天音くん」
天音
「あ゙?」
結莉乃
「天音くんには沢山ありがとうがあるよ。刀や体術を教えてくれた事や身を呈して守ってくれた事、玲瓏に助けに来てくれた事…本当にありがとう」
天音
「ンなの、ったりめェだ。…オレこそありがとな…その、沢山…名前呼ンでくれてよ。結莉乃のお陰で、自分の名前も良いかもなって思えた。それから、これ…大事にすっから」
結莉乃
「天音くん…!」
天音
「どわっ…」
首飾りを見せながら恥ずかしそうに笑う天音を見て、嬉しくなって思わず抱きついた結莉乃を天音は、一度ぎゅっと抱き締めてから離れる。そして、凪が静かに隣に立つ
凪
「出会った頃は冷たい態度をとってしまい…すみません」
結莉乃
「そんなっ…あの対応が普通だと、私は思います」
凪
「そう言って頂けると有難いです。…貴女の何事にも前向きに取り組む姿勢は全ての者を明るくしました。臆せず王へ物言う時は冷や冷やしましたが…結果それが良かったのですね」
結莉乃
「そんな…良く言ってくれ過ぎですよ」
凪
「そんな事ないです。王にまた大切な人が出来て良かったです」
結莉乃
「居なくなっちゃいますけど……、あ…雪も」
凪
「後で会ってあげなさい」
結莉乃
「はい。…凪さん…乗馬や舞を教えて下さりありがとうございました」
凪は柔らかく笑むと後ろへ下がり、千兼と変わった