第19章 それは前兆として増え迫るもの
千兼
「俺が色んな事情を聞いたの最近だけど…まーさかこんなに早くお別れが来ちゃうなんてなぁ」
結莉乃
「千兼くんは不思議な人で…玲瓏に居る時は何もかもが少し怖かった。でも、一緒に遭難した日から千兼くんには助けてもらった事が多いよ」
千兼
「そーかぁ?助けられたのは俺だろ。仲間として認められたのも結莉乃ちゃんのお陰。まぁ、まさか壬生の住民になるとは考えもしなかったけどなぁ」
結莉乃
「千兼くん、壬生に凄く馴染んでると思う。皆とも上手くいってるし」
千兼
「ははっ…玲瓏も嫌いじゃねぇけどなぁ。壬生は心地良いよ」
結莉乃
「良かった。…ありがとう、千兼くん」
俺こそ、と言って柔らかく抱き締めると離れていく
結莉乃
「胤晴さん…」
胤晴
「固まって冷えきり…屋敷の者にも優しく出来なくなっていた俺の心を溶かしてくれてありがとう」
結莉乃
「私こそ…異質で人間なのに受け入れてくださってありがとうございました」
胤晴
「君は特別だ。…強くて美しい君が俺の支えだ」
結莉乃
「胤晴、さん…」
好きな人程…言葉が浮かび上がってこなくて…いや、伝えたい言葉ばかりで溢れ過ぎて何を伝えたら良いのかが分からない…と結莉乃は思った。そして、気が付いたら胤晴に抱きついていた
結莉乃
「好き…大好きです、胤晴さん…っ」
胤晴
「俺も…結莉乃を愛している」
結局、一番に伝えたいのは想いだった。二度と会えないのだから二度と告げる事が出来ない。強く強く二人は抱き締め合った。その後は悲しい空気にはならず、全員でその現実を掻き消す様に騒ぎ笑い…思い出に浸るのだった
結莉乃は最近、不安で眠れなかったが…その日は幸せで満たされ深く深く…眠る事が出来た