第19章 それは前兆として増え迫るもの
結莉乃
「嬉しいよ…私の為にこんな素敵な…っ」
千兼
「あー、泣くなよぉ」
隣に居た千兼は溢れる結莉乃の涙を親指で優しく拭ってやる
天音
「おら、ンなとこで突っ立ってねェでさっさと来い」
結莉乃
「うん…!」
結莉乃は現実世界に戻ってしまうかもしれない、という事実を今だけは忘れようと沢山食べて沢山笑った。そして、スマホにその光景を保存した
結莉乃
「んっ!これも美味しい!」
眞秀
「だろ?」
結莉乃
「やっぱり眞秀くんは天才」
眞秀
「ありがとな。…結莉乃が来てから今日まであっという間だったな」
結莉乃
「うん、本当に。眞秀くんの頼もしい声や姿に何度も助けられたよ」
眞秀
「そりゃ良かった。…人間は苦手だが、結莉乃は好きだ俺」
結莉乃
「ありがとう。私もいつも味方でいてくれる眞秀くんが好きだよ」
好きという言葉を告げるのは少しだけ躊躇われたが、異性としてでは無く仲間としてだから許されるだろうか…なんて思いながら結莉乃は告げた
結莉乃
(それに、もう二度と会えないんだから伝えておかなきゃ…どんな好きでも)
彼等のお陰で前向きな結莉乃が少し戻ってきていた。眞秀と話していると八一が入って来て…眞秀は、すっとその場を離れた。どうやら一人ずつに彼女と話す時間が設けられたらしい
八一
「君と初めて会った時の俺、印象良くなかったでしょ」
結莉乃
「正直…。でも、胤晴さん思いの優しい人だなってその後思ったよ」
八一
「そっか。…困るなぁ、結莉乃ちゃんが居なくなんの」
結莉乃
「八一くん…」
八一
「情報収集で女の人と会話する度、強い匂いを嗅ぐ度…君の事を思い出てたんだ」
結莉乃
「私を?」
八一
「うん。落ち着くんだ君の声も匂いも…」
結莉乃
「何か擽ったいな…ふふ、ありがとう」
頬を軽く掻きながら笑う結莉乃の頭を八一は優しく撫でて、慎太に変わる