第18章 身を滅ぼす考え
彼が上安曇の王の息子であった事に結莉乃が驚いていると、彼が振り向いて結莉乃へ深く頭を下げる
「数多の人々を助けたいという貴女の言葉に腹を立て、このような行動を起こし…父が申し訳ありませんでした」
結莉乃がそれに返事出来ないでいると眞秀が群衆へ向けて声を上げた
眞秀
「ところで、あんた等はこのままで良いのかよ。あんた等も傷や病気を彼女に治してもらっただろ。間違ってんのはどっちか…本当は分かってんだろ?」
それまで結莉乃を心配気に見上げていた群衆が、眞秀の言葉で互いに顔を見合せる
上安曇の民
「私は許せません。…民を物だと思っていた事にも腹が立ちましたが、沢山の人を助けたいと思っている彼女を自分勝手な理由で亡き者にしようとした事は…もっと許せません!」
上安曇の民
「僕は壬生へ観光しに行った時、怪我をしました。不安だった時に彼女が大丈夫だと笑いかけて治してくれました。そんな優しい彼女を打首にするなんて反対ですっ」
上安曇の民
「俺達は貴方の所有物じゃ無い!彼女だって違う。壬生はとても豊かな領だった。上安曇とは違う。大雲様はその地位を即刻、章臣様に譲るべきです!」
一人が声をあげれば次から次へと大雲に対する不満と結莉乃への感謝が溢れ返った。
眞秀
「聞こえるか?これが生の声だ」
大雲
「何を…っ…奴等を捕らえよ!」
打首隊の彼等は少し戸惑いながらも抜刀し胤晴達へ突撃していく。胤晴達は群衆を守る様に刀を振るう
慎太
「自分の民が傷付いても良いと言うのか…っ」
天音
「言っても無駄だろ、クズはクズだ」
胤晴達は刃を向けず、全て気絶だけをさせる。そうして誰もの意識から結莉乃が外れた時、彼女の両肩を誰かが後ろから優しく掴んだ。
結莉乃自身もそれを見ていて驚いて、振り向くと…そこにはこの場が似合わない存在が結莉乃を見ていた
和都
「貴女に何かあったら助けると私は約束しました」
結莉乃
「和都さん…」
そして、柔らかい瞳を鋭くして大雲を和都が見詰める
和都
「…返して頂きます、私の…大切なお友達を」
止めようとする大雲に向けて和都がお札を放つと、彼の動きは止まる