第18章 身を滅ぼす考え
打首隊
「我等が王の申し出を拒んだ事により本日、華岡結莉乃の打首を執行する!…何か言い残したい事はあるか」
結莉乃
「……死にたくない…」
弱々しく発せられた結莉乃の言葉を聞くと、打首隊の男は持っていた刃を結莉乃の首に軽く当てる
眞秀
「死なせる訳がねぇだろ」
結莉乃
「え…?」
打首隊
「何だ…!?」
突然聞こえてきたいつでも頼もしい声に結莉乃は目を丸くする。大雲も驚いたのか身を乗り出して声の主を探す
大雲
「なっ…」
群衆に紛れて人間には無い角と尻尾を持った者達が立っていた。結莉乃の首に刃を当てていた男も驚いて、刀を下ろす。それによって首が自由になった結莉乃の視界に入ったのは…大切な仲間達の姿だった
結莉乃
「皆…っ」
助けに来てくれた、その事実が結莉乃の涙腺を緩める
胤晴
「俺の大切な人を返してもらおう」
大雲
「ええい、やかましい!大体、我の下に居る民をどう使おうが我の自由だろう。この世の人間は我の物だ。故にあの女も我の物だ!それが、我の命令に背きおって」
胤晴
「ふん。随分と傲慢だな。…もう二度と俺の大切な人の命を奪わせたりしない」
自分勝手な物言いに胤晴は汚物でも見る様な視線を大雲に送る
大雲
「五月蝿い。そなたとて変わらんだろう」
凪
「貴方とうちの王を比べないで頂きたい」
八一
「そうだよ。胤晴さんは常に民の為に動いている。その地位にふんぞり返るだけのあんたと一緒にするな」
千兼
「その通りだよなぁ。彼は…彼の大切な人に対して愚行をしていた俺までも仲間として受け入れてくれた。器の大きさが天と地ほどの差がある」
大雲
「黙れ黙れ!」
喚く大雲を群衆は静かに見詰める
「父さん。貴方は間違っています」
大雲
「……っ!?」
「私も彼女に助けて頂きました。民を大事にし民の為に動かなければならない立場でありながら、そのような自分勝手な考えを持っていてはいけません」
大雲を父と呼んだのは、結莉乃が書物を購入した日に上から落ちて来た瓦から守ってくれた所作に品のある彼だった