第18章 身を滅ぼす考え
胤晴
「合格だ」
千兼
「へ…?」
凪
「聞こえなかったのですか?」
千兼
「聞こえましたけど…合格とは…」
胤晴
「二人で帰って来る、それをちゃんと守った君を仲間として壬生へ迎えよう」
千兼
「え…」
珍しく動揺しているのか千兼の様子は普段と違い、思わず彼を除く全員が笑った
八一
「そんな顔出来んだね」
天音
「間抜けだな」
千兼
「…っ…五月蝿いなぁ」
結莉乃
「良かったね、千兼くん!」
眞秀
「良かったなー、千兼くん」
千兼
「あ゙!馬鹿にしたねぇ!?」
仲違いをし疑っていた彼等の間には笑いが溢れ返っていた。こうして千兼は無事、彼等の仲間として正式に認められた
その日の午後、天音との稽古が終わった結莉乃の身体がふらりと少しだけ揺れた。その身体を隣に居た天音が当然の様に支える
天音
「大丈夫か」
結莉乃
「うん、大丈夫。ちょっとふらついちゃっただけ…支えてくれてありがとう」
天音
「おう。気ィ付けろよ」
結莉乃は、気を付けると笑いながら額の汗を拭った。結莉乃は稽古が終わると次は厩舎へと向かった
雪に跨がろうとした瞬間、結莉乃は軽い目眩に襲われそのまま尻もちをついてしまう
凪
「大丈夫ですかっ?」
自身の愛馬を見ていた凪が慌てて結莉乃に近付き、優しく抱き起こしてやる。雪も心配気な視線を向ける
結莉乃
「すみません、ちょっと目眩が…でも大丈夫です!」
凪
「そうですか?」
結莉乃
「はい!続けられます」
凪
「分かりました。何かあればすぐに申してください」
結莉乃はその言葉に元気良く返事をする。道場でのふらつきも目眩だったのかも、と思う。ちゃんと眠れているし、食事だってしっかり摂っている…何で目眩なんか、と結莉乃は不思議に思ったが深く考える事は無かった