第18章 身を滅ぼす考え
二人は上安曇に向かう準備をして、呼ばれた屋敷へと脚を踏み入れた
上安曇の王
「ほう、そなたが治癒能力を持つ者か。…して、彼は?」
豪華に装飾された空間に座っている人間領上安曇の王である、山名目 大雲(ヤマナメ ダイウン)は結莉乃の斜め後ろに座っている千兼へ視線を向けた
結莉乃
「彼は─」
千兼
「彼女の護衛です」
大雲
「ふむ…壬生は鬼領だが、そなたは蜥蜴じゃろ?」
千兼
「壬生の方が俺に合ってるなぁ、って思っただけですよ。それよりこんな護衛と話してる場合じゃ無いのでは?」
大雲
「おお、そうじゃったそうじゃった」
千兼の言葉に大雲は膝を叩いて結莉乃を見た
大雲
「そなたは上安曇の民も沢山、治してくれておると聞いた。ありがとう」
結莉乃
「いえ」
大雲
「それで今回なんじゃが…そなたは腰痛も治せるか?」
結莉乃
「恐らく…」
大雲
「それは良い!治してくれ」
結莉乃
「分かりました。…失礼します」
結莉乃は、すっと大雲に近寄ると掌を向け光を溢れさせる。大雲も周りに居た家臣もその光景に感動しているようだった
光が消えると大雲が嬉しそうな表情を浮かべた
大雲
「おお!これは凄い!腰が痛くないぞ」
結莉乃
「それは良かったです」
安堵したように笑む結莉乃を見て大雲は満足そうに口を開く
大雲
「どうだ、我だけの為にそなたの力を使わんか」
その言葉に結莉乃は少しの嫌悪感を抱き、千兼も眉を小さく反応させた
結莉乃
「お断りします。私はこの小さな力で助かる人が居るのなら、誰か一人の為でなく沢山の人に使いたいです」
結莉乃の毅然とした態度に千兼は緩く口角を上げた。だが、その逆で大雲は面白くなさそうに唇を震わせる