第18章 身を滅ぼす考え
千兼
「あんたの治癒能力は今じゃ誰もが知ってる。その能力を狙ってる奴なんて沢山居ると思うぞぉ?…まぁ、俺が言うのもだけどさぁ」
その時、千兼が心配してくれているのだと結莉乃は理解する
結莉乃
「じゃあ、千兼さんが一緒に来て下さい」
千兼
「はぁ?」
凪
「それは許可出来ませんよ」
結莉乃
「凪さん!」
ある考えがあって提案したが、監視していた凪が現れて結莉乃の提案を却下した
凪
「まだ信用を得られていない彼と二人行動させて、その帰りに攫われたらどうするつもりですか?」
結莉乃
「それです!千兼さんと行って何も無く帰ってこられれば彼は信用を得られる筈です」
千兼
「なーんでそこまでするかなぁ」
結莉乃
「それは…千兼さんは私を守ってくれたから」
千兼
「………。約束しますよ。何も無く二人で此処にちゃーんと帰って来るって」
結莉乃の言葉に息を吐き出したものの、千兼は凪を見詰め…真剣な声で告げた。凪も真意を探る様に藤色の瞳を見詰めた
凪
「……分かりました」
結莉乃
「凪さ─」
凪
「ですが、その約束を守れなければ…問答無用で貴方を殺します。…良いですね?」
千兼
「勿論」
結莉乃
「え、ちょ…そんな…凪さん!」
凪
「何を焦る必要があるのです。貴女が信用させる為に出した提案に此方も乗ったのです。…帰ってこられる自信が無いのですか?」
結莉乃
「…っそんな事、ないです!」
凪
「宜しい。…王には私から伝えます。では、行ってらっしゃい」
会釈をして凪は二人に背を向けて去ってしまった。どこか不安そうな表情を浮かべる結莉乃を見て千兼は笑う
千兼
「なーにがそんな心配なわけ?あの約束、俺は違えねぇよ。あんたが信じてくれたんだろ」
結莉乃
「はい…!」
自分の意思を曲げそうになった結莉乃は千兼の言葉に大きく頷いた