第18章 身を滅ぼす考え
千兼
「へぇ…昨日も思ったけど壬生の食べ物は玲瓏よりも、何か美味いねぇ」
皆で囲む食事の場に千兼が居た。
彼は玲瓏よりも温かく優しい味の壬生の料理を好ましく思っていた
その様子を見ていても危険なようには感じない。だが、気を抜かぬように全員が交代で千兼を監視する事になった
千兼
「なーにしてんだぁ?」
結莉乃
「千兼さん。…今お花を植えていたんです」
千兼
「花かぁ…玲瓏にはそんなもん無かったなー」
そうのんびり告げながらも千兼はしゃがむ結莉乃の隣にしゃがみ、彼女の作業を見詰める
結莉乃
「え、っと…やります?」
千兼
「んー…良い」
だが、視線が落ち着かなくて結莉乃は無理にでもやらせてみる事にした
結莉乃
「良いから、やってみてください。ほら、こうやって穴を掘ってその穴に入れるんです」
千兼
「はぁ…?」
結莉乃
「ほらほら!」
千兼
「たく、分かったよ」
渋々ながらも千兼は穴を堀り、花の種を植えた。その作業を終えると結莉乃は嬉しそうに笑った
結莉乃
「千兼さんのお陰で早く終わりました。ありがとうございます!」
千兼
「いーえ。無理矢理やらされただけだしなぁ」
結莉乃
「でも、楽しそうでしたよ?」
千兼
「んなわけねぇよー」
土を払いながら笑う千兼を見て結莉乃も笑みを浮かべる
結莉乃
「あ!」
ゆったりとした空気が流れていたが結莉乃の声で、その空気は壊れた。千兼は不思議そうに結莉乃へ視線を向ける
結莉乃
「私、上安曇から呼ばれてたんでした」
千兼
「怪我を治すってやつかぁ?」
結莉乃
「はい、恐らく…」
千兼
「一人で行って大丈夫なわけ?」
結莉乃
「え?だってお屋敷からですし…安全なのでは」
疑問にも思わなかった事を突っ込まれれば今度は結莉乃が、不思議そうな視線を千兼に送る番だった