第3章 始まった非日常
眞秀
「着物…良く似合っているな」
結莉乃
「へっ…!?」
その時、結莉乃からぼんっと音がし顔が真っ赤に染った─…
結莉乃
「さ、さっきは…ごめんね」
眞秀
「ん?あぁ、気にすんな。急に真っ赤になって動かなくなったからびっくりしたけどな。…もう大丈夫か?」
結莉乃
「うん、もう平気」
推しに面と向かって褒められた事の破壊力が強くて噴火してしまったのだった。そして今は落ち着き町を並んで歩いていた。
城下町はとても賑わっていてそれだけで楽しくなった。
結莉乃は色んな店を見ながら歩いていたが、ふと…一件の店に脚を止められる
結莉乃
「わ…綺麗な簪…」
店先に飾ってある玉簪は柄は黒で玉部分は白地に色とりどりの鞠に花が舞っており、結莉乃の目は釘付けになった。
眞秀
「ほぉ…?良いじゃねぇか。ちょっと待ってろ」
結莉乃
「え、ちょっと…!」
隣から覗き込んだ眞秀がその簪を見て一言、零してから手に取り会計をしに行こうとするのを結莉乃は慌てて止める。
すると、夕陽色の瞳を結莉乃向け、にっと歯を見せて笑う
眞秀
「良いんだよ。突然知らん場所に来て心細いだろ。でも自分の気に入ったもん持ってると、御守りみてぇで少し安心するだろ。大人しく贈られてな」
ぽんっと簪を持っていない方の手で纏めた髪を崩さない様に結莉乃頭を撫でてから支払いに行く。彼女はその気遣いに感動していた
結莉乃
(流石推し!え、待って?推しからのプレゼント!?えぇ…幸せ!)
眞秀
「おい、どうした?」
結莉乃
「あ、いや、何でも!」
眞秀
「そか?…ほいよ、これ」
いつの間にか戻って来ていた眞秀の声に、はっとして結莉乃は笑みを向ける。可愛らしい袋に入った簪を渡されれば結莉乃は受け取り息を吐き出す
結莉乃
「ありがとう…大事にする!凄く!」
眞秀
「ははっ…おう。それ、付けてみたらどうだ?」
結莉乃
「そうだ…そういえば女中さんが簪を付けようとしてくれて止めてたから付ける!」
思い出した様に告げると丁寧に紙袋の封を取り簪を取り出す