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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第17章 心の交わりと遭難




結莉乃
(こんな表情するんだ…)


その表情に見惚れ胸がきゅうっとなるのを感じ結莉乃は胤晴を抱き締める腕に力を込めるが、それでは足りない分を言葉に乗せた


結莉乃
「好きです、胤晴さん…」


聞こえてきた声に胤晴は思わず驚く。好きだという言葉を聞ける間柄になれたのだと嬉しくなり、胤晴もまた結莉乃を抱き締める腕に力を込める


胤晴
「俺も…好きだ」


互いに溢れ出す想いを伝え合った二人は暫くして身体を離し、結莉乃は胤晴の部屋を後にした。

そして、向かったのは若葉に教えてもらった地下牢であった。薄暗い地下牢には蝋燭の光だけが辺りを淡く照らしていた。初めて見る空間に少しだけ息が詰まった


結莉乃
(此処だ)


結莉乃が辿り着いた牢の中には壁に背を預けて眠る千兼だった。結莉乃は静かにしゃがみ千兼を見た


千兼
「何しにきたんだぁ?」

結莉乃
「お、きてたんですか…」

千兼
「んや、あんたの気配で目が覚めた」


瞼も開かれず発せられた声に結莉乃は驚いてしまった。結莉乃は気を取り直すように息を小さく吐き出す


結莉乃
「何で…薫さんの命令に背いたんですか?」

千兼
「気分、って答えで満足してくれる?」

結莉乃
「………」

千兼
「ふっ…しないかぁ」


言葉も発さず、じっと見詰める結莉乃を軽く持ち上げた瞼から覗く瞳で確認して苦笑する


千兼
「杠の女以外は刀を持たない。戦にも出ない。…それが当たり前だった。なのにあんたは刀を持って気味の悪い異形に挑む…それに、女に庇われて借りは返したなーんて言われたのも初めて。まぁ…簡単に言っちまえば」


千兼は一度、言葉を切ると…ふわりと柔らかい笑みを浮かべ藤色の瞳で結莉乃を見詰める


千兼
「あんたに心を奪われちまった、ってわけ。満足?」

結莉乃
「え……本当、ですか?」

千兼
「ほーんと」


こんな嘘を吐く理由が分からないが…でも、千兼の言葉が嘘のようにも見えなくて戸惑ってしまう



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