第17章 心の交わりと遭難
結莉乃は胤晴の部屋に呼ばれていた為、地下牢には後で行く事にして部屋へ向かった
結莉乃
「結莉乃です」
胤晴
「入れ」
結莉乃は襖を開けて部屋へ入ると、少しだけ空気が冷えているのを感じて緊張する。
だが、胤晴は片腕を結莉乃の方への広げた
結莉乃
「……」
合っているのか…少し不安になりつつも結莉乃はゆっくりと胤晴へ近付く。すると胤晴は結莉乃の手首を掴み、自分の腕の中に収める
胤晴
「…君がまたどこかへ行ってしまうのでは無いかと、今まで以上に気が気では無かった」
結莉乃
「すみません…」
胤晴
「柄にも無く取り乱しそうになった。…そうならなかった自分を褒めたい」
それを聞いて結莉乃は顔を上げ、両手を伸ばして胤晴の頭を撫でる
結莉乃
「凄い!偉い!」
胤晴
「ふっ…君だけだぞ。俺にこんな事するの…それに誰のせいだと思っているんだ」
結莉乃
「あ…すみません」
胤晴
「いや、良い…漸く安心できた」
結莉乃
「すみません、迷惑ばかりかけて」
手を離した結莉乃は、ぽふっと胤晴の胸元に額をあてる。胤晴はその小さな身体を優しく抱き締める
胤晴
「何故…奴を庇った?」
結莉乃
「庇った…というより事実を述べただけ、というか。薫さんが来た時…彼言ってたんです。薫さんの命令は聞けないって…あれは嘘じゃないように感じて…その、薫さんの空気が…本気だったというか」
結莉乃は胤晴の様子を伺いながら言葉を零していく
胤晴
「君の言葉は信じよう。だが、彼をすぐ自由にする事は出来ない。…それは理解出来るな?」
結莉乃
「はい、勿論です」
胤晴
「今はまず君が無事に帰ってきた事を喜ぼう。…雪には感謝だな、それに気が付いた凪にも」
結莉乃
「雪の落ち着きが無かったって…」
胤晴
「相棒である結莉乃の危機を理解していたのかもしれん。雪の相棒は良く狙われるからな」
結莉乃
「胤晴さん…!」
胤晴
「ははっ」
目を細め口を開けて笑う、無邪気な胤晴の姿を初めて見た結莉乃の鼓動は大きく跳ねた