第17章 心の交わりと遭難
胤晴
「恐らく君は彼の命を受けて結莉乃を攫いに来たのだろう。そんな相手を簡単に屋敷へ入れ…いつまた彼女を連れて行くかも分からんのに信じろと?」
千兼
「まぁ、そう言われるのは分かってます。でも俺もう彼女を玲瓏に連れて行こうなーんて考えちゃいないですよ」
胤晴
「信じられる証拠が無い」
結莉乃
「あ、あの…」
ピリつく空気の中、結莉乃は控え目に手をあげる。すると三人の視線が彼女に集まる
結莉乃
「薫さんの命令で連れて来る様に言われていたとしても…彼は崖から落ちた時、私を助けてくれました」
凪
「それは貴女に怪我をさせるなという命もあったからでしょう」
結莉乃
「そうだと思います。…でも、瓦礫に出口を塞がれた時も開けてくれたし異形が来た時も一緒に戦ってくれました。それにさっき薫さんが来た時、彼は私を隠してくれたんです」
胤晴
「それ全てが君を信じ込ませる為の演技かもしれないだろう」
結莉乃
「それは…」
千兼
「彼女を責めないで下さいよ。…俺の事、地下牢にでも入れれば良いじゃないですか。そうしたら安心でしょ?」
千兼の言葉に胤晴は考える。結莉乃の事を疑っている訳では無い。だが、結莉乃の性格を利用して嘘を吐いているとしたら…それを考える
胤晴
「はぁ…仲間にするかどうかは置いておいて、着いてこい」
千兼
「ありがとうございます」
千兼は凪からの鋭い監視するような視線を浴びながら鬼城へと脚を踏み入れた。勿論、屋敷内の全員が千兼の訪れに反対をした。…だが彼の意見を取り入れる事にして千兼は暫く地下牢へ入れられる事になった