第17章 心の交わりと遭難
入口を塞ぐ瓦礫にその石を思い切り叩きつけるが、びくともしない。瓦礫を叩く音に千兼は閉じていた瞼を持ち上げ藤色の瞳を結莉乃へ向ける
千兼
「無駄な事してんなよぉ。どうせ開けれねぇんだから…無駄に体力消耗するだけだろぉ?」
結莉乃
「…っそれでも、少しずつ進めてたら…くっ…いつかは出られると思うから…!」
千兼
「ふんっ…言ってろ」
結莉乃
「いっ…」
再び目を瞑ろうとした千兼だったが、叩いていた石で掌を怪我した結莉乃の声に千兼は溜め息を吐く
千兼
「……ちっ、たく…退け」
結莉乃
「え?」
千兼
「めんどくせぇなーあんた…退けって言ってんだ」
結莉乃
「わ、分かった!」
結莉乃は面倒臭そうに告げられた千兼の言葉に頷き慌てて退く。千兼は懐から御札を取り出し塞ぐ瓦礫に押し付け、素早く抜刀し御札に突き刺す
─ガラガラッ
結莉乃
「…っ!凄い!」
千兼のお陰で瓦礫は崩れ落ち外が露になった
結莉乃
「よい、しょ…」
千兼
「なぁ」
結莉乃
「はい?」
千兼
「さっきの石で出来た傷治さねぇの?」
結莉乃
「これですか?」
千兼
「そー」
右掌に出来た赤い線を見せながら結莉乃が問うと千兼は外に出れた事で伸びをして頷く
結莉乃
「これは治さないです」
千兼
「何で?」
結莉乃
「自分に使うのって少し気が引けるんです」
千兼
「ふーん…でもさぁ、あんたが怪我してたら傷を庇って動くわけだから余計に体力使うわけだろ?今のは別に良いけど重症の時は使えよー?」
まさかそんな助言のような言葉を貰うと思っていなかった結莉乃は驚いて千兼を見る。その視線に気が付いた千兼は、へらっと笑うだけだった
千兼
「さっさと山下りるぞぉ」
結莉乃
「玲瓏には行きませんよ」
千兼
「無理矢理にでも連れて行くから問題なーし」
結莉乃
「なっ…!」
すたすたと歩き出す千兼の背中を結莉乃は悩んだが、結局追いかける事にした