第17章 心の交わりと遭難
千兼
「おーい、大丈夫かぁ?」
結莉乃
「大丈……千兼さんの方が…!」
千兼
「あー…俺は大丈夫」
起き上がった結莉乃は薄らと入る光で千兼が怪我をしているのを確認して思わず慌ててしまう。だが、当の本人は呑気に笑うだけだった
結莉乃はどんな理由があったにしても落下している最中に千兼が守ってくれたお陰で怪我をしなかった。その事に感謝を表す為に結莉乃は千兼を見る
結莉乃
「じっとしていて下さいね」
千兼
「はー?」
結莉乃
「良いから!」
千兼
「へいへい」
結莉乃の勢いに千兼は視線を逸らしながらも頷いた。それを見た結莉乃は千兼へ掌を向け淡い光を溢れさせる。光が千兼の傷に染み込んで消えると、そこにあった傷は無くなっていた
千兼は消えた傷を手を揺らして珍しげに眺めた後に笑う
千兼
「ふん、とんだお人好しだなぁ…あんた。敵の傷を治すなーんて」
結莉乃
「傷に敵とか味方とか関係無いですよ!痛いのは誰だって嫌です…それに、苦しんでいる人を見たくないんです」
千兼
「だから、どんな奴でも治すってかぁ?」
結莉乃
「はい。目の前で怪我している人を見たくないんです。多分…自分勝手な意見です。自分が見たくないから治すなんて…その人の為なんて思いながら、きっと自分の為なんでしょうね」
千兼
「ふーん…」
岩壁に背をもたれさせて千兼は結莉乃を見た。そもそも結莉乃は千兼の事を敵だという認識が無い。
千兼
(変な女)
何て思っている千兼を他所に結莉乃は慌て出す
結莉乃
「どうしましょう…これ開けられますかね!?」
千兼
「さーな。多分、無理じゃねぇ?余計な事せず大人しくしてりゃいつか助けが来るっしょ」
呑気に千兼は瞼を閉じて寝ようとしてしまう。その事に結莉乃は驚き、自分で何とかするしかないと思い近くにあった両掌からはみだすくらいの石を手に取る