第17章 心の交わりと遭難
千兼
「俺、走んの嫌いなんだよねぇ…」
大きく息を吐き出してから千兼は結莉乃を追い掛けて走り出す。結莉乃は道から外れ足場の悪い方を走り、木を生かして逃げる
結莉乃
「はぁ、っ…はぁ…っ」
慣れない山道を走る結莉乃の息は既に上がっていた。後ろを時々、振り返りながら走るものの…千兼は本気を出していないのか呑気に走っている。のに、とても早くて結莉乃を更に焦らせる
結莉乃
「…っ…嘘…」
千兼
「あー疲れた。ほら、もう逃げ場なんてねぇんだから大人しく俺と玲瓏に行こーな?」
結莉乃が辿り着いたのはあと数歩、下がったら崖であった。結莉乃は、ちらっと崖下を見る
結莉乃
(これくらいの高さなら…死ぬ事は無いかも…)
崖の高さはそこまで無いものの飛び降りるには、かなりの勇気がいる。だが捕まるよりはまし…結莉乃はそう思った
千兼
「あんま手荒な事はするなって言われてるし…」
そう面倒臭そうに零しながらも千兼は結莉乃のと距離を縮めてくる。もう下がれる隙間が無くて結莉乃は飛び込もう、そう思い決意したのと同時に…千兼が一歩踏み出した瞬間
─ガガッ
結莉乃
「え…っ」
千兼
「あ…?」
結莉乃、千兼
「ぎゃああああ!/おわっ…!」
二人がいた場所の地面が崩れ…共に崖下へと落下していく。その間も冷静な千兼は、結莉乃が怪我をしたら何をされるか分からないと思い
千兼
「ちっ…」
面倒臭そうに舌打ちをしてから地面に頭を向けた状態で落下しながら、蜥蜴の尻尾で結莉乃を引き寄せると千兼は彼女の頭を抱える様にして抱き締めた
結莉乃は何が起きたか分からないが、考える余裕などなく強く瞼を閉じる。
千兼
「ぐ…っ」
地面と背中が激突した千兼は小さく声を上げたものの、崩れた地面が降ってきていた事もあり痛む身体に鞭を打って出来ている狭い空間に結莉乃を抱えながら滑り込む
千兼のお陰で下敷きになる事はなかったが、空間の入口が塞がれて二人は閉じ込められてしまう