第17章 心の交わりと遭難
翌日─…
結莉乃
「よし…」
眞秀
「出来たか?」
結莉乃
「うん!」
眞秀
「そういや、今日は何すんだ?」
結莉乃
「山に暮らしてる人達いるでしょ?その人達から依頼があったからそこに行ってくる」
眞秀
「気を付けて行ってくるんだぞ」
結莉乃
「うん、大丈夫!」
結莉乃は肘を曲げて笑って見せた。眞秀もそれに応えるように笑い、二人は広間へ向かった
そして結莉乃は眞秀に告げていた通り山で暮らしている人達の怪我を治すために山道を歩いていた
結莉乃
「着いた…」
結莉乃は僅かに乱れる呼吸を落ち着けると小屋の扉を叩く。中から出てきた老夫婦の怪我を治し、その少し隣にあった青年の怪我を治す
青年
「本当にありがとうございました、こんな山奥まで」
結莉乃
「いえ。また何かありましたら」
青年
「はい」
青年にお辞儀をしてから結莉乃は下山するために歩き出す。だが、暫く歩いた所で何やら気配を感じて脚を止める
結莉乃
(異形?……でも、何かちょっと違う様な…)
念の為に柄へ手をかけ結莉乃は辺りへ意識を集中する。ざざっと足音がしてそちらへ視線を向けると…芥子色と毛先は根岸色のウルフヘアをした人物が姿を現した。
結莉乃
「千兼…さん…?」
何で此処に?と結莉乃は疑問に思いつつも彼には勝てない事など火を見るより明らかだ。あの日、逃げた自分を捕まえに来たのか…そう思うと身体が震えそうになる
千兼
「やだなぁ…さん付け何てやめてくれよ。…ま、何でもいーか。薫様に頼まれてあんたを連れ戻しに来た」
結莉乃
「…っ…」
千兼
「面倒臭いから抵抗しねぇでくれると助かるんだけど」
結莉乃
「そんなの…出来ませんっ」
怠そうに告げられるそれに結莉乃は抗う為に彼へ背を向けて走り出す。千兼の歩幅と結莉乃の歩幅は違う…すぐに捕まってしまうかもしれないが、大人しく捕まるつもりは無かった
逃げていく結莉乃の背中を見て千兼は面倒臭そうに後頭部を掻く