第17章 心の交わりと遭難
自室に戻った結莉乃は未だに夢見心地であった
結莉乃
(本当に私…)
胸がいっぱいで結莉乃は大きく息を吐き出してから嬉しさに笑みを零した。現実世界では常に忙しく、休日は昼まで寝てからゲームをやっていたため恋愛とは無縁の生活をしていた
誰かと両想いになれる、その感覚は久し振りで結莉乃はふわふわとしていた。思い出せば湧き上がる嬉しさとむず痒さに結莉乃は両手で顔を覆い、身体を揺らしながら声を上げる
若葉
「結莉乃さん、どうかなさったんですか?」
結莉乃
「えっ…」
両手で覆っていたとはいえ叫ぶ様な声は、此処の襖を開けようとしていた若葉に不安を与えた。突然、若葉の声が聞こえ結莉乃は驚いたものの頬を緩ませ若葉へ全てを話した
若葉
「まぁ…!おめでとうございます」
結莉乃
「ありがとうございます」
若葉は結莉乃の手を取り自分の事の様に喜んだ
若葉
「結莉乃さんのお陰で主様は穏やかになられました。良かったです…主様がもう一度、誰かを愛する事が出来て」
彼女の言葉に結莉乃は、胤晴が信頼され好かれているのが分かり嬉しくなった
ふわふわした気持ちのまま空は闇色に包まれ…結莉乃は布団に入りながらスマホの液晶に映る胤晴との写真を眺めていた。特に何かが変わる訳ではないと分かっていても…想いが通じている、その事実が結莉乃を浮かれさせる
だが、朝餉の準備もあるため結莉乃は静かに眠りにつくのだった