第17章 心の交わりと遭難
結莉乃
「その気持ちには応えられないです。好きって返しておいて何を言ってるんだって…感じなんですけど…私は此処の住民じゃないです。だから、いつ自分の世界に帰ってしまうか分かりません。…いつか居なくなる私では胤晴さんを幸せに出来ません」
本音でもあるが告げる事は苦しくて泣きそうになるのを我慢しながら伝える結莉乃を見て、胤晴は優しく声を出す
胤晴
「幸せは…二人でなるものじゃないのか」
結莉乃
「そう、かもしれませんが…なれないじゃないですか。私はいつか居なくなるかもしれないんですから…」
胤晴
「そんな事、今考えたって仕方ない。大事なのは今の君がどうしたいかだと…俺は思う」
結莉乃
「今の私がどうしたいか…」
胤晴
「嗚呼。それを聞きたい」
優しい声と言葉…眼差しに結莉乃が堪えていた涙は簡単に溢れ出してしまう
結莉乃
「……っ…そんなの、胤晴さんの傍に…特別な存在として居たいです…っ」
胤晴
「特別な存在として…傍に居てくれ」
結莉乃
「あい゙…!」
泣きながら返事をする結莉乃を見て、両手を頬に当て親指で涙を拭ってやりながら胤晴は目尻を下げて笑みを零す
胤晴
「泣くな」
結莉乃
「だって胤晴さんが嬉しい事言うからぁ…!」
仕方ない、というように笑いながら文句を述べる結莉乃を優しく抱き締め背中を何度も撫でてやる。結莉乃はいつ帰ってしまうか分からない恐怖にも似た感情を持っていたが、胤晴の言葉で少しだけ心が和らいだ気がした
胤晴にしがみつく様に結莉乃は暫く泣いていた