第16章 束の間の安らぎ
結莉乃
「慎太くんの気持ちは凄く嬉しい。…けど私…慎太くんの事、大切な仲間として好き…なの」
慎太
「そうか」
大きく変わらない表情ながらも慎太の眉は下がっていて結莉乃は申し訳なく思う
慎太
「あんたの気持ち聞けて良かった。…俺と結莉乃は変わらずこれからも仲間だ。変に気を遣うなよ」
結莉乃
「慎太くん……。うん、ありがとう」
慎太
「舞、頑張れよ」
気まずくなったら、そんな事を考えていた自分を結莉乃は恨んだ。そして慎太の優しさに感謝をした。彼の言葉に鼓舞され結莉乃はまた練習しようと広間へ戻った
広間には勿論、胤晴の姿は無かった
結莉乃
(まだ八一くん戻ってないけど…)
練習禁止を無視して結莉乃は舞を始めた。力を抜く所、敢えて力を入れる所…何も考えずに舞を続ける。自分の心を落ち着けるように。そして、舞終わると拍手が結莉乃の耳に届いた
八一
「本当は怒ってやりたい所だけど、凄く良かったよ」
結莉乃
「え、本当に!?」
八一の言葉に結莉乃は思い切り振り向き問い掛ける。八一は苦笑しながらもしっかりと頷く
八一
「けど今日はおしまい。…脚が悲鳴あげてる」
結莉乃
「あ…」
指さされた場所を見て結莉乃は頬を引き攣らせる。脚を労らず無理矢理に踊ったせいで潰れたままのたこにより、床が赤く染っていた
流石に八一の言葉に頷くしかなくて、急いで床掃除を済ませ自室へ戻った。結莉乃は毒を盛られた時は死の危険を感じた為に迷わず治癒の力を使ったが、基本的に進んで治癒の力を自分に使うのを躊躇っていた
結莉乃
(でもこの脚じゃ支障出るかもだし…)
未だにじんじんとする脚を眺めながら結莉乃は考える。暫く考えて漸く決める事が出来た結莉乃は、脚へ向け掌を向ける
光が傷を治せば痛みも熱さも脚から消え、心做しか落ち着いたような気がした