第3章 始まった非日常
答えられない結莉乃を置いて女中は話し続ける
女中
「だって、主様が女性をお招きになるなんて珍しいんですよ。…それも、お屋敷で当面のお世話をすると伺いました。特別なご関係で無ければ有り得ない事です」
結莉乃はこの辺りが何故だったか思い出せず、素直に不思議だったため疑問を投げる事にした
結莉乃
「珍しい…とは?」
女中
「あら…ご存知ないのですか?」
最初は、しまった…と口元を手で覆った女中だったが、すぐに咳払いをして内緒話をする様に結莉乃へ顔を寄せた
女中
「私から聞いたと言わないでくださいね?…実は主様には夫婦になる予定だった方がいらっしゃるんです」
結莉乃
「え…」
女中
「とても美してくて聡明な方でした。…ですが数年前に人間の手によって命を奪われてしまったのです」
沈む声で告げられた言葉に結莉乃は息を飲む。
推しているキャラクターがいれば、そちらばかり見てしまうのは仕方が無い事だが彼等の事を本当に何も知らないんだと、結莉乃は思った。
結莉乃
「で、でも…此処は人間や他の種族が共存しているのでは…?」
女中
「共存とは言いましても立場的には我々、鬼が少し上なのです。勿論それで成り立っているので共に過ごせております。ですが、一部の納得出来ない方や他種族を受け入れられない方達は力の弱い鬼を攫って従え…働かせているらしいです」
結莉乃は自身にはない角が生えている女中の頭部を見てから、すぐに視線を瞳へと移す。酷いと結莉乃は素直に思った。角が生えていたりしていても他は人と変わらないのに、と悲しい気持ちになった。
自分達の世界でも未だにある差別…この世界ではより濃いものであるのだと、ゲーム内でも理解していたが実際に話を聞くと胸が痛くなった。
先程まで笑っていた彼女の暗い表情を見て結莉乃は思わず声を上げた