第3章 始まった非日常
凪
「つまり、眞秀に恋をしていると?」
結莉乃
「へ!?あ、いや…その…そういう方も中にはいらっしゃいますけど、私はどちらかと言えば恋というより…ただ好きというか…」
推しを説明するのがこんなにも難しい事だと思わなかった結莉乃は悩みながら答えるも、やはり恥ずかしくて戸惑ってしまう
結莉乃
(恋愛としてなんて私は考えた事なかった…今だってどっちかって言うと芸能人に会ったような、そんな感覚だし…)
考えれば考える程、分からなくなっていると眞秀が口を開く。
眞秀
「な、成程…何となくその違いは分かった。分かったが、変に緊張する」
凪
「おや、嬉しくないのですか?」
眞秀
「や、嬉しい。…だから、ありがとうな」
優しく笑んでくれた眞秀の頬が何となく赤くなっている様に見えて、結莉乃は少し嬉しかった。
結莉乃
(慎太くんって無口なイメージだったし、私とは初めて会ったから話し掛けてもらえないと思ってたけど…意外と嫌がられてないようで安心した…)
その後、食事を終えて解散し結莉乃は今与えられた部屋に居た。彼女の身体には淡い桃色の着物が、昨夜から結莉乃の世話役を与えられた女中によって着付けられていく。
淡い桃色の生地に白く大きな百合が腰元から脚に向かって斜めに、いくつも咲いていた。
結莉乃
「凄く綺麗…」
女中
「良くお似合いですよ」
思わず零れた言葉に女中が柔らかく笑みを浮かべ彼女へ声を掛けると、結莉乃はそれがお世辞でも何でも素直に嬉しくて頬を緩ませた。
そして、次に彼女が持った帯は無地ながらに夕陽色が綺麗で、眞秀の瞳を思わせ結莉乃は恥ずかしい様な嬉しい様な擽ったい気持ちになった。
女中
「結莉乃さんは主様とはどういうご関係なんですか?」
帯を締めてくれている間に女中が控えめにだが返事に期待している様で、わくわくとした空気を出しながら結莉乃へ話し掛けた。
突然の問いに結莉乃の思考はフリーズした。まさか女中である彼女が主のプライベートな話へ踏み込むと思っていなかったからだ