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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第16章 束の間の安らぎ




胤晴
「君の絵は温かみがあって良いな」

結莉乃
「そうですか?」

胤晴
「嗚呼。…君みたいだ」

結莉乃
「私みたい…」

胤晴
「君も温かいからな」


愛しい者を見るような視線を浴びた結莉乃は、思わず頬を染めるがそれを誤魔化すように顔を逸らす。好かれているのでは、なんて勘違いしてしまいそうになったからだ


胤晴
「この絵…前のように乾いたら貰っても構わないか?」

結莉乃
「はい!今回は自信作なので是非!」

胤晴
「ありがとう」


今回は彼女の絵に自分が描かれている事もあり、胤晴は表情には出さないが心が弾んだ。それから思い出したように声をあげる


胤晴
「君に頼みたい事があるんだが…聞いてくれるか」

結莉乃
「?…はい」


不思議に思いながらも結莉乃は首を傾げて続きを待つ


胤晴
「毎年この時期に民の健康を祈って女性が舞を披露するんだ」

結莉乃
「舞、ですか?」

胤晴
「嗚呼。…この屋敷と関係が深い者が行うのだが…俺はその候補に君を入れたいと考えている」

結莉乃
「え…私ですか!?無理ですよ!私、舞なんてやった事ないですし…っ」

胤晴
「開催まで一ヶ月ある」

結莉乃
「一ヶ月しかだと思うのですが…」


気軽に受けて一ヶ月後、人様の目に触れて良いものに仕上がらなかったら…その事を考えると簡単に首を縦に振る事は出来なかった。だが、胤晴の言葉は素直に結莉乃は嬉しかった


結莉乃
(関係が深い者…そんな立ち位置が此処でもらえるなんて…)


そう思うと心が暖かくなり受けたい気持ちにもなる。結莉乃が悩んでいると胤晴が口を開く


胤晴
「君は短期間で刀を覚えた。だから、必ず一ヶ月後には出来る様に君ならなる筈だと俺は思った。…誰よりも頑張れる君だからこそ俺はこの話を君に持ってきた。民にも好かれているようだしな」


優しくそんな事を言われてしまえば結莉乃の心は簡単に動かされてしまう。やりたいかやりたくないかで問われれば、結莉乃の内側はやってみたいと告げていた



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