第16章 束の間の安らぎ
結莉乃は厩舎から自室へ戻りスマホ画面を眺めていた。どれも撮った写真は良くて自然と表情は緩んでいた
結莉乃
「よし…!」
此処に来た時は出来ずに眞秀にやってもらった襷掛けも、今は結莉乃一人で出来るようになっていた。そうして袖を留めると結莉乃は机に向かった
それから結莉乃が集中して数時間…
先程撮った写真が淡い色と共に紙へ描かれていた
結莉乃
「出来た…後は乾かしたら完成」
自身が描いた絵を眺めて結莉乃は小さく息を吐き出す。達成感を胸にしながら開けたままの襖から空を見上げる。以前考えていた事を行動に移せて満足し、絵に視線を戻す
小鳥と戯れる胤晴の絵を見ると自然と鼓動が一度、大きく跳ね上がるのを感じる
結莉乃
(やっぱり私…胤晴さんの事、好き…なんだ)
自覚すればする程に五月蝿くなる心臓を外側から軽く抑えていると、たまたま結莉乃の部屋の前を通った胤晴が声を掛ける
胤晴
「どうかしたのか」
結莉乃
「うぇ…!?」
突然の本人登場により結莉乃の口からは変な声が零れていた。その声に胤晴は首を傾げたものの、すぐに視線は結莉乃が描いた絵に向かっていた
胤晴
「これ…」
結莉乃
「あ…さっき屋敷を回って写真を撮っていたんです。それを絵にしてみました」
胤晴
「ほう…」
胤晴は自身が描かれている紙を手に取る。結莉乃は何を言われるか分からなくて緊張しながら胤晴の様子を窺う
胤晴
「俺は…こんな優しい顔をしていたのか」
自分がそんな表情をしていた記憶が無くて、もしかして結莉乃がそうしたのでは?というような視線を彼女へ向ける。
その視線を受け取った結莉乃は、懐からスマホを取り出して操作し先程の写真を見せる
結莉乃
「ほら、見て下さい!」
胤晴
「……疑ってすまなかった」
証拠提出により疑惑が晴れた結莉乃は何故か勝ち誇った様な笑みを見せる。だが、胤晴はそれを気にせず再び絵へ視線を向ける