第3章 始まった非日常
眞秀
「慎太!?い、いつ入ってきたんだよ…?」
慎太
「ん?異世界から来た彼女を庇う眞秀とそれに優しいと言う凪のとこからだ」
眞秀
「ほぼ最初からかよ…!声掛けろよ」
慎太
「何やら深刻そうだったからな…黙っていた」
涼しい顔をして淡々と答える慎太だが、結莉乃は未だに驚きで言葉が出なかった。凪は特に何か言うでもなく息を吐き出した。
凪
「ほら、仕舞いなさい。…頂きましょう」
驚いた彼女の手から落ちた端末を凪が拾い結莉乃に渡すと、はっとしてお礼を言いながら端末を受け取り懐へ仕舞う。食事の前だったのを思い出し慌ててお膳の前に座ると、全員で合掌をして食事を始めた
凪
「ん?今日の味噌汁…いつもと違いますね」
眞秀
「あぁ、それ。結莉乃が作ったんだ」
上品な動きで味噌汁を口にした凪が呟くと、眞秀が笑って答えた内容に凪と慎太の視線が結莉乃へ向く
結莉乃
「突然、転がり込んだのに一部屋貸して頂いたので自分に出来る事をしなきゃと思いまして。…お口に合わなかったでしょうか?」
凪
「いえ、とても美味しいです」
慎太
「嗚呼」
その言葉にぱぁっと花が咲いた様な笑みを結莉乃は零した。彼女の表情につられたように眞秀と凪の目元が少しだけ緩んだ。
そうして、先程とは違った和やかな空気の中で食事が進んでいる最中に思い出した様に慎太が結莉乃を見る
慎太
「そういえば、推しとは何だ?」
先程も問われたそれに結莉乃は顔を上げて少しだけ気まづそうに、それでいて恥ずかしそうに視線を彷徨わせたり眞秀に向けたりする。視線に気が付いた眞秀が首を傾げて夕陽色の瞳を結莉乃へ向けた
結莉乃
「あー…と、その…好き、というか…気に入ってるとか…まぁ、そういう感じで捉えてもらえれば…」
眞秀
「…え」
まさか、本人の前で推しの説明をする日が来るなんて思ってみなかった…と結莉乃の身体に熱が集まり、分かりやすく赤くなる。
それを聞いた眞秀は目を丸くし、凪はどこか楽しそうに笑み…疑問を投げた慎太は表情を変える事無く結莉乃を見ていた。
基本的に慎太の表情が変わる事はない為、不思議な事ではなかった