第3章 始まった非日常
─カシャ
結莉乃は今撮ったばかりの眞秀をタップして凪へと液晶画面を見せる。すると、彼の瞳が僅かに丸くなった
凪
「成程…」
眞秀
「すげぇ…結莉乃の世界はこんなに便利なもんがあんだな」
結莉乃
「ん。…あ、それから…これが実際にやり取りしているものです」
自分の方へ向け直していた端末を再び凪へと向けると、その画面には美優とのやり取りが広がっていた。凪は顎に指を添えて興味深く液晶を見詰める。
それから、結莉乃は再び口を開く
結莉乃
「確かに、凪さんが仰っていた様に天音くんと八一さん、慎太くんの事…知っています。でも、その…推しでは無かったので名前と顔…後はこんな感じの方…って言うのしか知らないです」
信じて欲しくて…気味悪がられたくなくて結莉乃は必死に言葉を続ける
結莉乃
「貴方達からしたら私の存在は気味が悪いと思います。突然、現れて異世界だとか貴方達の名前を知っていたりだとか…。でも、私もどうしてこうなったのか…正直分からなくて。ただ一つ言えるのは、貴方達の事を何でも知っているわけじゃありません。だから、これから知っていきたい……どうか、私を気味悪がらないでください…っ」
此処へ来てみて結莉乃はゲームの中で彼らが息をしている事を知った。聞いた事がない会話や展開を体験して理解した。だから、ゲーム内だけの決められた事しかしない彼等しか知らない為…此処での彼等を知りたいと純粋に結莉乃は思った。
凪
「ふっ……変わった方ですね」
下がっていた視線が凪の冷たさが消えた声音によって引き上げられた
凪
「先程の言葉は撤回します。信じましょう、貴女を」
結莉乃
「ほ、本当ですか…?」
凪
「ええ。貴女が嘘を言っている様には見えませんので」
結莉乃
「……っ…ありがとうございます…!」
「ところで推し…と言うのは何だ?」
結莉乃
「あぁ、それは─……え?」
凪の緩やかに上げられた口角と掛けられた言葉に結莉乃が喜び、その中で投げられた問いに彼女が答えようとしてから固まる