第14章 彼岸花の毒
一旦自身の気持ちを落ち着けようと胤晴は一つ息を吐き出す。胤晴の膝枕で眠る結莉乃は浅い呼吸をしながら時折、苦しげに小さく呻く。凪が持って来た薄手の掛け布団を結莉乃へ被す
若葉
「お持ちしました」
襖の向こうから聞こえた声に反応した慎太は慌てて立ち上がり、開いた襖の向こうで若葉は心配そうにしながら小瓶を持っていた
慎太
「ありがとう」
若葉
「いえ。…失礼致します」
眠る結莉乃へ一瞬視線を向けた若葉は眉を下げたが、お辞儀をして去っていく。和都は正座をした膝の上で手をぎゅうっと握り速い呼吸を繰り返す
胤晴達は何故この場に和都が居るのか不思議だったが彼女の様子を見て今回、結莉乃が倒れた事に関わっているのだと理解する
胤晴
「それで慎太、何があった」
慎太
「はい。…俺が見た時、お姫さんが醤油漬けを作ったとか何とかで…。彼女が何かを作る事は今まで無かったので少し不思議に思って見ていると、それを食べた結莉乃が急に倒れました。呼吸困難に陥っている、ようでした」
上手く纏まっているか不安に思いながらも慎太は丁寧に見た事を報告する。その報告に彼等の視線が一気に和都へ向く
胤晴
「和都」
和都
「…は、い」
胤晴
「君は何か企んでいたのか?…これは何だ」
胤晴は受け取った小瓶を和都へ見せる
和都
「それは…彼岸花の球根です…」
凪
「彼岸花の球根?…あれは球根部分の毒性が強いものです。食べてしまうと、嘔吐や下痢、呼吸困難などの症状が出てしまうので…結莉乃の症状と同じかと」
胤晴
「解毒剤はあるのか?」
凪
「いえ…解毒剤はありません。大量に食さない限り致死量に至る危険性は少ないですが…結莉乃がどれだけ食したのか分かりませんので、大丈夫だとは言い切れません」
胤晴
「そうか…。それで理由は」
凪から結莉乃が食べた物についての説明を聞き表情を僅かに険しくした胤晴は、再び和都へ視線を向けて短く問う。
押し潰されそうになる圧を四方から浴びて和都は息苦しくなる。こんなに圧を掛けられたのは生まれて初めてで俯く…が、自身が行った事が無かった事には勿論ならないため腹を括り話し始める