第14章 彼岸花の毒
結莉乃を覆っていた光は消えるが、治った訳では無く身体が本能的に危険を理解し切れたのだった
結莉乃
(意識が…)
和都の目的は結莉乃の命を奪う事…だったが、廊下に蹲り目を見開いて激しく苦しむ姿を見て焦り出す
和都
「結莉乃さんっ─…」
慎太
「触るな!」
和都
「…っ…?」
和都が結莉乃へ手を伸ばすと、通りかかった慎太の鋭い声が彼女を制した。ばっと顔を上げた和都の表情は真っ青に染まる
慎太は慌てて駆け寄り優しく背中を擦る
慎太
「結莉乃…っ」
結莉乃
「しん、た…く…っ」
苦しげに慎太の名を呟いた結莉乃は、ぷつんっと意識の糸が切れたように廊下に倒れてしまった。慎太は慌てて結莉乃を起こすもののその腕はどこまでも優しい。
仰向けにさせた結莉乃の表情は未だ苦しそうで額には汗が滲んでいる。だが、先程かけた治癒が僅かに効いているらしく今は呼吸が少し出来ているようだった
和都
「慎太さ─…」
慎太
「あんたも来い」
普段は和都に敬語で話す慎太も今では鋭い声で遮り、敵意を剥き出しにする。慎太は優しく結莉乃を抱き上げ彼女に負担が掛からない様に…だが、早足で胤晴の元へ急ぐ
慎太
「失礼します」
結莉乃を抱いたまま器用に襖を開ける。室内で仕事をしていた胤晴は掛けられた声の後にすぐ開いた襖に視線をやる
胤晴
「…っ…どうしたんだ」
ぐったりと慎太に抱かれている結莉乃を見て胤晴は目を丸くする
慎太
「説明は後で…。今は少し落ち着きましたが危険な状態です」
胤晴
「こっちへ」
慎太
「はい」
その言葉に胤晴はすぐさま自身の元へ連れて来るよう促す。胤晴が胡座を描く隣に結莉乃を慎太が優しく仰向けで寝かせると、胤晴は結莉乃の頭を自身の太腿の上に乗せる。
胤晴は懐から御札を取り出し結莉乃の首元辺りに翳す。その間に騒ぎを聞き付けた眞秀、天音、凪、八一が駆け付ける
胤晴
「結莉乃が持つ力程の効果は無いが…やらないよりは良いだろう」
先程の御札には痛み、苦しみの緩和効果があり胤晴は施したのだった