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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第14章 彼岸花の毒




八一と屋敷へ戻ってきた結莉乃は一週間振りに凪から乗馬を教わっていた

雪に乗り楽しそうに凪と会話をする結莉乃の姿を木の影から覗くのは和都だった


和都
(自由に出掛けられて、彼等に声を掛けられて…何が…何が違うのよ…)


和都は基本的に優しい性格をしている。しかし、自身の屋敷でもそうだが姫という立場もあり周りから甘やかされるのは当然で…常に自分が特別でなければ嫌、という思いも持っているため結莉乃の存在は許せるものではなかった


それから少しして結莉乃の姿は道場にあった。木刀を持ち真剣な眼差しで天音に打ち込み、時には投げられながらも必死に食らいつく姿を和都は眺めた


胤晴
「和都?何をしているのだ」

和都
「…っ…胤晴様」


和都は突然掛けられた声に身体を小さく跳ねさせて振り向く。するとそこには胤晴の姿があり、和都は戸惑ってしまう。胤晴は道場を覗いて結莉乃と天音が稽古をしているのを確認する


胤晴
「何だ…君も刀を持ちたいのか?」

和都
「え?いえ、そんな…少し興味はありますけど…」

胤晴
「止めておいた方が良い。女性が刀を持つには苦労が多過ぎる…それに君は姫だ。持つ必要は無い」

和都
「ですが…結莉乃さんは」

胤晴
「彼女は恐らく特別だろう。意思がしっかりしているから苦労を乗り越えられる」


袖に両手を入れながら道場を眺めて告げる胤晴の眼差しはとても優しくて、和都の中で何かが壊れるのを感じる。結莉乃には出来て和都には持つ必要がないと…彼女へ向けられた言葉と視線に和都の内側に住み着いた何かが激しく成長する

すると、道場の入口に立つ二人に気が付いた結莉乃が額の汗を拭ってから両手を振って飛び上がりながら大きな声を出す


結莉乃
「胤晴さん聞いて下さい!さっき私、初めて天音くんから一本取れたんですよ!」

天音
「るっせェ、たまたまだ。調子乗ンな!」


嬉々として告げる結莉乃を見て天音は声を荒らげ、げしっと結莉乃のお尻を軽く蹴る



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