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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第14章 彼岸花の毒




八一
「勿論。涎垂らしちゃって」

結莉乃
「それは流石に言い過ぎだよ!」

八一
「ははっ、怒んな怒んな。ほら、さっさと準備してきなよ」


水桶を持ったまま少し怒った様に言う結莉乃を見て八一は楽しそうに笑う。だが、準備を促されると慌てた様に頷く


結莉乃
「分かった!…和都さん失礼します!」

和都
「え、ええ…」


走り去る結莉乃の背中を和都が見送っていると八一は彼女に向き直る


八一
「んなら、お姫さん。また」


手を振って去る八一を見送った和都の周りには静けさが訪れた。胸元で拳を握ると小さく呟く


和都
「どうしてあの子は誘われるのよ…」


以前は居なかった結莉乃が来てから雑に扱われている様に和都は感じているが、それは彼女の思い込みで扱いは以前と変わっていない。だが、一度そう感じてしまったら余計に結莉乃へ良い感情を和都は持てなかった





結莉乃
「んー、美味しい…!」

八一
「良かったね」


甘味処へやって来た二人。結莉乃は新商品の黒糖饅頭を頬張り幸せそうな笑みを浮かべる。彼女の前で湯気がふわりと上がるお茶を八一は啜る


結莉乃
「八一くん食べないの?」

八一
「ん?うん」

結莉乃
「でも、これ美味しいよ?」


湯呑みを置いた八一は頬杖をついて結莉乃を見詰める。首を傾げる結莉乃を見て八一は何かを思いついた様に口角を上げる


八一
「はい」

結莉乃
「はい?」


口を開く八一見て結莉乃は更に首を傾げる。すると八一は「それ」と黒糖饅頭を指差して再び口を開く。彼がして欲しい事を理解した結莉乃は目を丸くする


八一
「ほら、早く」


結莉乃は僅かに頬を染めながらも覚悟を決め黒糖饅頭を手に取り、八一の口元へ寄せる。そして、黒糖饅頭を一口齧ると八一は満足そうに笑む


八一
「うん、美味しい」

結莉乃
「…絶対楽しんでる…」

八一
「そんな事ないよ」


恨めしそうな視線を送る結莉乃を見て、八一は肩を揺らして笑いながら言葉返した



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