第14章 彼岸花の毒
鬼姫である和都は、周りから甘やかされ愛されて過ごしてきた。彼女は鬼城に暮らす皆を好きだが…長年想いを寄せているのは王である胤晴なのだった。
今年も彼等に会えるのを楽しみにやって来たのに屋敷内は空気が張り詰めていた。そして、結莉乃が帰ってきたと思えばちやほやされており…それが和都は気に入らない。
和都
「あ、八一さん。こんにちは」
翌日の昼刻。
廊下を歩いていた和都は八一と遭遇し淡い紅を引いた唇は緩やかに弧を描く
八一
「あぁ…こんにちは、お姫さん」
和都
「今日はお天気が良いですね。これからどちらかに向かわれるのですか?」
八一
「ん?嗚呼、ちょっと町に」
和都
「そうですか。町はきっと楽し─…」
八一
「あ、結莉乃ちゃん!こんにちは」
和都の言葉を遮ったのは庭の花に水やりをしていた結莉乃を見付けた八一の声だった。それに反応して振り向いた結莉乃は、明るい笑みを見せる
結莉乃
「八一くん!こんにちは!…あ、和都さんこんにちはっ」
和都
「こんにちは」
八一の隣に居た和都に気が付いた結莉乃は同じ笑みを向けて挨拶をする。和都はぎこちなくならないよう気を付けながら挨拶を返す
八一
「ねー結莉乃ちゃん。これから町に行くんだけど付き合わねぇか?」
結莉乃
「え、良いの?」
八一
「良いから誘ってんでしょ?」
八一の言葉に、そっかと結莉乃は返す。それから、思い出したように口を開く
結莉乃
「だったら─…」
八一
「甘味処、だろ?」
結莉乃
「何で分かったの!?」
結莉乃は自分が言いたかった事を言い当てられて丸く大きい目を更に丸くする
八一
「前助けた時の帰り道で新商品の告知、見てたでしょ」
結莉乃
「気付いてたの!?」
薫の名前を知ってから会ったあの日…眞秀と八一が助けてくれた帰りに見付けた甘味処の新作告知。もうその新作が出ている時期な為、町に行くならとお願いしようとしていたのを言い当てられ結莉乃は驚いた
二人のやり取りを聞いている和都の心中は穏やかなものでは無かった