第14章 彼岸花の毒
その日の夜─…
眞秀と結莉乃は並んで台所に立っていた
眞秀
「まさか二度も結莉乃が台所に立たない時期を経験するとはな」
結莉乃
「ごめんね」
眞秀
「何で謝るんだよ。結莉乃が悪い訳じゃないだろ。…誰にも謝るな。誰も結莉乃を責めてねぇから」
眞秀の優しい言葉に結莉乃は鼻の奥が、つんっとするのを感じる
結莉乃
(皆いつも私の心を軽くしてくれる…)
感謝してもしきれないと結莉乃は味噌汁を混ぜながら思う。そうして二人で夕餉を作り終えると再び広間に全員が集まる
八一
「やっぱり結莉乃ちゃんの味噌汁、美味いね」
眞秀
「もう一回言うけどな?ずっと俺の味噌汁、飲んでただろうが」
八一
「でも、結莉乃ちゃんの味噌汁飲んだら違ぇのよ」
眞秀
「ったく」
和都
「このお味噌汁、結莉乃さんが作ったんですか?」
結莉乃
「あ、はい。此処に来てから眞秀くんと朝餉と夕餉を作らせて頂いてるんです」
和都
「そうなんですね」
どこか複雑そうな表情を和都は一瞬、浮かべるもすぐに笑みを浮かべる
慎太
「味噌汁だけじゃない。結莉乃が作るものは全部美味い。…眞秀が作るのもだが」
眞秀
「ついでみたいに言うなよ」
結莉乃
「私は眞秀くんのご飯食べた時、感動したよ?」
眞秀
「そうか?」
結莉乃
「うん!凄く美味しいもん」
気を遣って言っているのではなく本心から言っているのが眞秀には伝わり、嬉しそうに目を細める。
和都が訪れてから感じていた緊張感は結莉乃が帰ってきた事により皆から無くなり、寧ろ彼女を中心に笑顔が溢れ会話が生まれている現状に和都は僅かに拳を握る