第14章 彼岸花の毒
結莉乃
「雪…」
白く綺麗な毛並みの馬に結莉乃が声を掛けると雪は下げていた頭を上げ、結莉乃を見る。すると、寂しげだった雪の瞳に喜びへ変わった気がして結莉乃は彼女へ手を差し出す。
雪がその手に鼻を押し当てると結莉乃も嬉しくなり、彼女の顔を優しく包み込む様に抱き締めて鼻筋に頬擦りをする
凪
「貴女が居なくなってから雪は食欲不振に陥っていました」
結莉乃
「凪さん」
不意に掛けられた声に反応して顔を向けると、そこには凪が居た。ここ最近の状況を知って結莉乃は眉を下げる
結莉乃
「ごめんね、雪」
凪
「貴女はちゃんと食べていましたか?」
結莉乃
「え…?」
凪
「少し顔色が悪い様に見えます」
するっと人差し指の甲で頬を撫でられれば結莉乃は僅かに驚くものの、問われたそれに目を伏せる
結莉乃
「玲瓏のものは美味しかったんですが…帰れないんだと思えば思う程、食欲が無くなってしまって」
凪
「やはり、あまり食べていないのですね」
精神的なものから結莉乃の食欲は湧かなくなっていた。凪は口角を上げて優しく言葉をかける
凪
「本日は夕餉の準備はせず、ゆっくりしたらどうですか?」
結莉乃
「…させて下さい。身体は元気なんです」
凪
「大丈夫ですか?」
結莉乃
「はい!」
凪
「では…楽しみにしていますね」
その言葉に結莉乃は大きく頷いた。久し振りに皆で食事をできる事に心が弾むのを理解し、頑張って作ろうと結莉乃は気合を入れた
結莉乃が戻った事により食欲が出た雪にご飯をあげてから屋敷内へ戻った。自室に向かう途中で和都に出会うと結莉乃は頭を下げる
結莉乃
「改めて謝罪させて下さい。…帰って来られたのが嬉しかったからと騒いでしまい…挨拶が遅れてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
和都
「そんな…謝らないで下さい。無事に戻って来られて良かったですね」
結莉乃
「はい…!」
和都の優しく柔らかい声に結莉乃は大きく頷く。和都の心に黒いものが住み着いている事も知らず結莉乃は彼女へ笑みを向ける