第3章 始まった非日常
結莉乃
(……怯んでちゃ駄目だ。人として信用に足る存在だって言うのを証明するには異世界から来たっていう証拠を見せなきゃいけない。簡単に信じてはもらえないかもしれないけど…でも、私を庇って眞秀くんの立場を悪くしたくない)
庇ってくれる頼もしい背中を見て結莉乃は自分に喝を入れる。自分のせいで推しの立場が悪くなるのが嫌だと思った結莉乃は、ゆっくりと眞秀の背中から出て凪の隣へ正座をする。
眞秀はそれを止めようとしたが、彼女の瞳から何か強いものを感じて結莉乃へ伸ばした手を戻した。
凪は横目で彼女の姿を確認するが、すぐにその瞳は伏せられる
結莉乃
「私の世界ではこれを使って連絡をとっているんです」
そう切り出して結莉乃は懐へ忍ばせておいたスマート端末を取り出し、畳の上へと置き凪の視界に映るようにする。凪は見た事が無い端末を目の当たりにして、訝しげにそれを見詰める
結莉乃
「スマートフォンって言うんですけど…これを使って遠くにいる相手とも簡単に文字のやり取りが出来たり、電話…あ、えっと…んー…この端末を通して会話出来たりするんです」
凪
「これでですか?」
結莉乃
「はい。アプリを開いて実際にやり取りしてお見せたいのですが此処は圏外なので無理で…そもそも元いた世界じゃないので繋がると思っていませんが…。あ、スクショしたやつなら…」
凪
「ま、待ちなさい」
結莉乃
「え?」
眞秀
「あぷり…とか、すく…しょ?とか急にぽんぽん知らん言葉出されても理解出来んよ」
いつの間にか隣に座っていた眞秀の言葉に結莉乃は、あ…っと申し訳なさそうに眉を下げる。でも、ちゃんと証明したくて結莉乃はまた口を開く
結莉乃
「写真…写真ならすぐに撮って見せられます」
眞秀
「薄くてちっこいのにか…?」
結莉乃
「うん。眞秀くんの事、撮っても良い?」
眞秀
「何か良く分からんが…良いぞ」
結莉乃
「ありがとう。……凪さん、見てて下さい」
液晶に指を滑らせてから、眞秀へ端末を向ける