第14章 彼岸花の毒
天音
「オレだってアンタに助けられたンだ。向こうに行く決断をしてオレを治してくれただろ…それが無かったらオレは死ンでたかも知んねェ。だから、アンタこそ謝ンな」
結莉乃
「…っ、ありがとう…ありがとう、天音くん…っ」
天音
「だーもう、泣くなや!」
結莉乃
「だって、天音くんがちゃんと居るんだもん…!」
天音
「ったりめェだ。…オレこそ、ありがとな…」
どこか照れ臭そうにお礼を述べる天音の言葉に結莉乃の涙はまた溢れる為、天音は慌てて結莉乃の後頭部に手を回し自身の胸板に顔を埋めさせて手拭いになる
天音
「アンタこんなに涙脆かったか…?」
結莉乃
「ぅ、っ…二度と皆に会えないと、…思ってたから…っ…嬉しくて」
天音
「……そうか」
結莉乃の言葉に天音はぶっきらぼうに答えたが、ごつごつとした手は優しく結莉乃の後頭部を撫でていた。
暫くして落ち着いた結莉乃は少しだけ恥ずかしそうにしながら天音から離れて笑ってから、思い出した様に声をあげる
結莉乃
「天音くんに稽古を付けてもらってたお陰で女の子を助けられたの」
脈絡の無い言葉に天音は首を傾げ続きを促す
結莉乃
「父親に手をあげられてる子がいてね。男の人だから勝てないかもって思ったんだけど…天音くんに自信を持てって言われたのを思い出して、その人に勝てたの」
天音
「そうか。…そりゃアンタが稽古を適当にやっていなかった証拠だ。しっかり結莉乃の実力に変わってンだ」
天音からの言葉に結莉乃は嬉しくなった。そして、天音に贈ったその場でつけてくれた首飾りがある事がまた結莉乃を喜ばせる
また明日から稽古をつけてもらう約束をしてから結莉乃は厩舎へと向かった。漢服にしか合わないと思っていた虎蒔から貰った羽織を試しに纏ってみれば、着物とも良く合い結莉乃はそれを愛用する事にした