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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第3章 始まった非日常




眞秀
「どうした?」

結莉乃
「さっき女中さんが持って行った数と合わないなって」

結莉乃
(あ、そうだ…確か胤晴さんは皆とご飯食べないんだったっけ)


口にしてから思い出したそれを流石に発する訳にはいかず、内心で呟く。ただ、彼が共にしないにしても数がおかしい…と結莉乃は顎に手を添える。
彼女の疑問に眞秀が口を開こうとしたのと同時に襖が開いた



「王は我々と食事はしません。天音と八一は女中が呼びに行きましたが寝ていたとの事でしたので蓋をして置いておかせました。冷めたとて自業自得です。…慎太は間もなく来るでしょう」


綺麗な黒髪を揺らして広間に入って来た凪が視線は向けないものの、彼女の疑問に棘を混じえて全て答えた。彼は広間で食事をするらしく、恐らく定位置であろう座布団の上に腰を下ろした。


眞秀
「あ、天音と─…」


「説明せずとも彼女なら把握しているのでは?」


当然の様に出てきた名前を眞秀が結莉乃に説明しようとしたのを遮り、凪は未だ立っている彼女へと初めて青紫の瞳を向けた。

勿論、知っているが…温度を感じない瞳に圧を掛けられ、探られているような気持ちと同時に咎められているような気分になり途端に酸素不足になる。それでも、何か答えなきゃと唇を開くものの息が漏れてしまい音が乗らない


眞秀
「だとしても、説明しなくて良い理由にはならないだろ」


隣に立っていた眞秀が背中に庇う様に結莉乃の前に立ち、凪の視線から彼女を隠す。すると凪は、ふっと小さく笑を零した



「異世界から来たという嘘か誠かも分からない事を言う方を庇って差し上げるなんて、お優しいですね」

眞秀
「昨日は異世界があるのを信じてただろ」


「昨日?…あぁ…定かでない事を王が考える必要は無いと思ったので、申したまでです。つまり、殆ど信じていない…という事です」


特に何でも無いように凪が答えると、眞秀は拳を握った。彼だって無条件に信じた訳ではなく、結莉乃を見て嘘を吐いている様には見えず…何より昨夜の眠れない姿も見ている為、本当に異世界から来て不安なんじゃないかと眞秀は思った。彼女と話してみて信じたのだ



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