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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第13章 慣れるが為にこの町を歩き出す




朝の散歩をしていた薫は目を瞑り鼻を、すんすんと鳴らす



「…今日は空気が澱んでいるね」


何かが起きる前触れだろうと薫は思い、準備を始める為に普段よりも早く散歩を終えた。結莉乃は浅緑色の生地に撫子色の帯を胸上で締めた襦裙の上に虎蒔から貰った羽織を纏っていた



───── ╴╴


「うっ…」

天音
「少し寝てろ」


玲瓏領主の屋敷、裏口で見張りをしていた男二人は天音の鮮やかな手刀によって簡単に気絶させられる。

そして、塀の奥で待機していた胤晴と慎太に合図を出し三人で裏口から屋敷内へと侵入する。見付かっても声をあげられる前に天音と慎太は確実に気絶させていく


「まーた面倒事かぁ…」

天音
「ちっ…蜥蜴野郎か」

千兼
「だからぁ…その呼び方やめろ?俺には千兼って名前があんだからさぁ」

天音
「うっせェよ」


面倒臭そうに欠伸をしながら三人の進路を塞いだのは千兼だった。自身の居住空間が危険に晒されているというのに彼には焦りというものが微塵も無い。天音が抜刀しようとすると慎太がそれを手で制す


慎太
「此処は俺に任せて大将と先に行け」

天音
「分かった」

胤晴
「任せたぞ」


胤晴の言葉に慎太は千兼から視線を外さずに頷く。胤晴と天音が去ると慎太は抜刀する


千兼
「俺、面倒事が大嫌いだから…さっさと終わらせようか」

慎太
「………」


千兼も抜刀すると二人は互いに、ぐっと身を下げてから地を蹴る。高い音を立てて二人の刀がぶつかり合う。何度もぶつかる度に凄い風が舞う


千兼
「あーやっぱりあんたら鬼は嫌だなぁ。強くて倒すのが大変だ」


大変と言っているわりには千兼の表情に焦りは無く、薄らと笑みさえ浮かんでいる。一方、慎太も普段通りの無表情のまま攻撃を繰り出す

二人が戦っている最中、胤晴と天音は屋敷内を走り気絶させるを繰り返す。すると向こう側から強い風が吹いてきて二人は腕で顔を覆う



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