第13章 慣れるが為にこの町を歩き出す
行ってみたい気持ちはあるが不安もある千恵の背中を結莉乃が優しく押してやる
結莉乃
「大丈夫。行っておいで?」
千恵
「……うん!」
最初は輪に入る事が出来なかった千恵だが、女の子に誘ってもらい輪に入る事が出来…今では楽しそうに笑っていた。
それを見て結莉乃と薫は安心して、住職に託す事が出来た。結莉乃は千恵に声を掛けてから二人で屋敷へ戻った。薫と別れて部屋に戻ると襖の前に虎蒔が立っていた
結莉乃
「虎蒔さん?」
虎蒔
「あ、丁度良い所に」
結莉乃
「どうかしたんですか?」
虎蒔
「これ」
結莉乃
「羽織…」
虎蒔
「もうすぐ冬が来るからね。身体を冷やさないように…おじさんからの贈り物」
結莉乃
「そんな…良いんですか?」
虎蒔
「ん、使ってくれると嬉しいな」
結莉乃
「ありがとうございます、虎蒔さん」
虎蒔
「いえいえ。じゃ、またね」
少しふわふわとした白い羽織物に結莉乃は嬉しくて、虎蒔が去ったのを確認してから顔を埋める。可愛くて暖かそうな贈り物は結莉乃の心を軽くさせた
部屋に入り結莉乃は開けたままの襖から見える橙色の空を見上げる
結莉乃
(壬生の皆は何してるのかな…)
そんな事を考えて一日を終える日々を結莉乃は玲瓏で数日間、過ごした。想像していたよりも玲瓏の人達は優しい。だがそれでも思い求めてしまうのは壬生での生活
玲瓏に来てから一週間経った今でも結莉乃の心には壬生が占めていた
結莉乃
(雪…また心閉ざしちゃってないかな…)
真っ白で綺麗な雪を思い出して眉を下げる。せっかく一歩前に進んでくれたというのに、裏切ってしまったと結莉乃は心の中で雪に謝罪をする
壬生での結莉乃の花が咲いた様な笑顔は、玲瓏に来てからは寂しげで儚い笑顔に変わってしまっていた