第13章 慣れるが為にこの町を歩き出す
結莉乃
「貴女のお父さん?」
少女
「……う、ん」
結莉乃はすぐに親が見付かって良かったと安堵して立ち上がる。男性はにこやかに結莉乃の前まで来て頭を下げる
父親
「すみません、娘がご迷惑を」
結莉乃
「いえ、そんな。…良かっ─…?」
少女の幼い手は結莉乃の漢服の裾を掴んで離さない。父親は困った様に笑みを浮かべて、しゃがみ込む
父親
「こら、お姉さんの服を掴んじゃ駄目だろ?」
結莉乃
「……?」
父親
「ほら、お姉さんも忙しい筈だよ」
中々、父親の言葉を聞かずに裾を掴んだままの少女を見れば結莉乃は笑みを浮かべる
結莉乃
「良かったら、私と遊ばない?」
少女
「え…?」
父親
「そんな…良いんですか?」
結莉乃
「はい。私、予定もありませんし。お父様さえ良ければ」
父親
「私は構いませんが…ただこの後、仕事があって…家でも良いですか?」
結莉乃
「はい」
話は纏まり結莉乃は少女と手を握り歩き出す。到着した小さな家は父娘、二人暮しなのだと父親が教えてくれた。居間に置かれた座布団に腰掛けて結莉乃は少女に問い掛ける
結莉乃
「貴女のお名前は?」
「千恵…」
結莉乃
「千恵ちゃんか、素敵な名前だね。…私は結莉乃。宜しくね?」
千恵
「うん…っ」
少しだけ千恵の表情が柔らかくなったように思えて結莉乃は安堵の息を零した。でも、彼女がこんなに怯えているのは何故だろう…と違和感が結莉乃に付き纏う。
父親は優しくて良い人そうだし…それ以外で何かあるのかな?と結莉乃が色々な事を考えていると台所に居た父親が千恵に手伝って欲しいと声を掛けた。その時、千恵が身体を跳ねさせるのを見て結莉乃は首を傾げる